カレントテラピー 33-5 サンプル page 8/32
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カレントテラピー 33-5 サンプル
Current Therapy 2015 Vol.33 No.5 11疫学435(図2)2).脳卒中には脳梗塞と出血性脳卒中(脳出血,クモ膜下出血)を含み,虚血性心疾患の定義は急性および陳旧性心筋梗塞,冠動脈形成術,1時間以内の心臓突然死とした.他の危険因子の影響を調整した多変量解析の結果,血圧レベルが高くなるにしたがって脳卒中と虚血性心疾患の発症リスクは有意に直線的に上昇した.至適血圧群(血圧120 / 80 mmHg未満)と比較すると,脳卒中発症のリスクは正常血圧群(120~129 / 80~84 mmHg)から,虚血性心疾患発症のリスクはⅡ・Ⅲ度の高血圧群(160 /110 mmHg以上)で有意に高かった.脳卒中を脳梗塞と出血性脳卒中に分けて検討すると,脳梗塞発症のリスクはⅠ度の高血圧群(140~159/90~99mmHg)から,出血性脳卒中発症のリスクは正常血圧群から有意に上昇した.また,1962~94年の久山町連続剖検652例について,生前の血圧レベルと腎動脈病変との関連を検討した3).その結果,動脈硬化および細動脈硝子変性の多変量調整オッズ比は血圧レべルが高くなるほど上昇し,至適血圧群に比べ正常血圧のレベルから有意に高かった.血圧高値は心血管疾患に共通の危険因子であるが,特に出血性脳卒中や腎障害に対しては正常血圧ないし正常高値血圧のレベルであっても無害とはいえない可能性がある.これらの心血管疾患の予防には,高血圧者に対する厳格な降圧治療に加えて,非高血圧者であっても血圧が高めであれば塩分制限や定期的な運動などの生活習慣の修正が必要であることを物語っている.2 糖代謝異常糖尿病と心血管疾患の間には密接な関連があることはよく知られているが,HbA1cレベルと心血管疾患発症の関係を検討した報告は少ない.そこで,2002年に久山町健診を受診し心血管疾患の既往歴がない40~79 歳の住民2 , 851 名について,追跡開始時点で糖尿病治療薬(経口糖尿病薬またはインスリン)を使用している者といない者に分け,さらに前者をHbA1cレベルで5.0%以下,5.1~5.4%,5.5~6.4%,6.5%以上の4群に分類し,心血管疾患発症との関係を病型別に検討した(図3)4).1.01.01.82.12.43.201234収縮期血圧拡張期血圧(n)(657)至適<120<80(545)正常120~12980~84(447)正常高値130~13985~89(626)Ⅰ度HT140~15990~99(359)Ⅱ+Ⅲ度HT≧160≧100血圧レベル(mmHg)*†****†2.01.41.2 1.1■脳卒中 □虚血性心疾患* p<0.05 vs. 至適血圧† 傾向性 p<0.05相対危険図2 血圧レベルが脳卒中・虚血性心疾患発症に及ぼす影響久山町住民2,634名,40歳以上,1988~2007年,多変量調整HT:高血圧調整因子:性,年齢,BMI,血清総コレステロール,血清HDLコレステロール,糖尿病,慢性腎臓病,心電図異常,喫煙,飲酒,運動習慣〔参考文献2)より作成〕HbA1cレベル(%)(糖尿病治療なし)1.02.63.69.78.31.0 1.22.13.64.4024681012(n)(955)≦5.0(923)5.1~5.4(736)5.5~6.4(104)≧6.5(133)糖尿病治療あり*** **■脳梗塞□虚血性心疾患*p<0.05 vs.HbA1c≦5.0%相対危険図3 HbA1cレベルが脳梗塞・虚血性心疾患発症に及ぼす影響久山町住民2,851名,40~79歳,2002~2009年,多変量調整調整因子:性,年齢,高血圧,心電図異常,BMI,血清総コレステロール,血清HDLコレステロール,喫煙,飲酒,運動習慣〔参考文献4)より作成〕