カレントテラピー 33-5 サンプル

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10 Current Therapy 2015 Vol.33 No.5434加した.以上をまとめると,わが国の地域住民では高血圧の有病率に大きな時代的変化はなかったものの,降圧治療の普及によって高血圧者の血圧コントロールは改善した.しかし,高血圧者の収縮期血圧の平均値は最近の集団でもいまだに140mmHgを超えており,高血圧者の半数以上は十分な血圧コントロールを達成できていないと考えられる.一方,代謝性疾患の有病率が時代とともに急速に増加しており,食生活の欧米化や運動不足の蔓延など,生活習慣の変化が影響していることがうかがえる.さらに,禁煙の推進に伴い喫煙率は低下した反面,女性の飲酒率は増加しており,女性の社会進出との関連が推察される.Ⅳ 心血管疾患罹患率の時代的推移次に,この5 集団をそれぞれ7 年間追跡した成績を用いて,脳卒中および急性心筋梗塞罹患率の時代的推移を年齢調整して検討した(図1)1).脳卒中の罹患率(対1,000人年)は,男性では1960年代の14.3から1970年代の7.0まで半減し,女性はそれぞれ7.2から4.1まで大きく低下したが,その後,罹患率低下の程度は緩やかとなり,2000年代の脳卒中罹患率は男性4.2,女性2.1であった.一方,急性心筋梗塞の罹患率には男女ともに明らかな時代的変化はなかった.危険因子の時代的推移と合わせて考察すると,脳卒中の罹患率が時代とともに低下した要因として,脳卒中の最大の危険因子である高血圧に対する治療の普及により高血圧者の血圧コントロールが改善されたことや,喫煙率が低下したことが挙げられる.しかし,脳卒中罹患率の低下の程度が近年鈍化していることや,急性心筋梗塞の罹患率に明らかな時代的変化がなかった理由として,肥満や糖代謝異常,脂質異常症といった代謝性疾患の増加が高血圧管理と禁煙の予防効果を相殺したことが考えられる.Ⅴ 危険因子が心血管疾患発症に及ぼす影響ここでは,危険因子が心血管疾患発症に及ぼす影響を検討した久山町の追跡研究の成果を紹介する.1 高血圧高血圧は心血管疾患の確立した危険因子であるが,この問題を比較的最近の日本人の地域住民で検証するために,1988年の久山町健診を受診した心血管疾患の既往歴のない40 歳以上の住民2,634 名を19年間追跡した成績を用いて,日本高血圧学会の『高血圧治療ガイドライン2014』に基づいた血圧レベルと脳卒中および虚血性心疾患発症との関係を検討した14.37.05.54.4 4.21.9 2.31.50.71.47.24.1 4.3 3.82.10.8 0.6 0.9 0.5 0.5男性女性1961~1968年1974~1981年1983~1990年1993~2000年2002~2009年(対1,000人年)1961~1968年1974~1981年1983~1990年1993~2000年2002~2009年*******†*†*p<0.05 vs. 1961 ~ 1968年†傾向性p<0.05■脳卒中 □急性心筋梗塞051015051015罹患率図1脳卒中・急性心筋梗塞の罹患率の時代的推移久山町5集団,40歳以上,各7年追跡,年齢調整〔参考文献1)より作成〕