カレントテラピー 33-5 サンプル page 28/32
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カレントテラピー 33-5 サンプル
Current Therapy 2015 Vol.33 No.5 89Key words513TAVI ─大動脈弁疾患に対する低侵襲治療─慶應義塾大学医学部循環器内科講師 林田健太郎経カテーテル大動脈弁留置術(Transcatheteraortic valve implantation:TAVI)は,周術期リスクが高く外科的大動脈弁置換術(SAVR)の適応とならない,もしくは高リスクな患者群に対して,より低侵襲な治療として開発されてきた.2002年にフランスのRouen大学循環器内科のCribier教授によって第一例が施行されて以来,2007年にヨーロッパでCEマーク取得,2011年にはEdwards社のSapienが,またMedtronic社のCoreValveも2014年に米国で米国食品医薬品局(FDA)の承認を受けている.現在までに世界中で15万例以上が治療されており,急速に普及しつつある治療法である.主に使用されているTAVIデバイスは前出のSapienとCoreValveがある.主な違いとしては,前者がバルーン拡張型であるのに対し後者は自己拡張型,前者がコバルトクロミウム製であるのに対し後者がナイチノール製,前者がウシ心膜を使用しているのに対し,後者がブタ心膜を使用している.留置経路として,より低侵襲な経大腿アプローチが第一選択とされている.足の血管アクセスに狭窄などの問題があり,経大腿動脈アプローチの適応とならない場合は経心尖アプローチなどの適応となる.日本では2013年6月にEdwards Sapien XTが薬事承認を受け,10月に保険償還を得ており,現在全国47施設が実施施設認定を受けている(2015年2月末日現在).施設基準として,Hybrid室,専門医数,経皮的冠動脈形成術(percutaneous coronary intervention:PCI)100例,SAVR 20例,ステントグラフト10例,経食道エコー200例などの年間症例数等を満たす必要がある.現在日本全体ですでに1,200例ほど施行されており,当初懸念されていた30日死亡率も欧米の約5%に比べ日本では1~2%程度と,初期の導入としては比較的良好な成績を達成している.しかしこの症例数の多くが指導医の監督下で施行されており,今後この成績を維持することが肝要である.この治療の最も大きなアドバンテージは,低侵襲であるため入院期間が短いことである.通常SAVRだと2 週間ほどの入院期間が必要となるが,経大腿アプローチだと,通常一週間以内,当院だと最短3日後に退院することができる.このTAVIは長期入院を防ぐことにより,ADLを落とさず大動脈弁狭窄症の治療を行うことができ,大変有用である.TAVI適応となるような高リスクの患者群ではほんの少しのミスが重大な結果につながり得るため,綿密なスクリーニングによる合併症の予防と注意深い手技,また術後管理が大変重要である.これまで治療が難しかった高齢者にとっては非常に体にやさしい低侵襲な治療であり,このアドバンテージを最大限活かすためには,ADLを低下させないように病棟におけるコメディカルを含めたハートチーム全体での取り組みが不可欠である.