カレントテラピー 33-5 サンプル

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88 Current Therapy 2015 Vol.33 No.5512IVUS/OCT横浜市立大学附属市民総合医療センター心臓血管センター准教授 日比 潔横浜市立大学附属市民総合医療センター心臓血管センター部長・教授 木村一雄横浜市立大学医学部循環器・腎臓内科学主任教授 梅村 敏血管内超音波法(intravascular ultrasound:IVUS),光干渉断層法(optical coherencetomography:OCT)は生体内において血管の断層像を取得できる手法である.IVUSは20年以上前にヒト冠動脈に対し臨床使用を開始しており,冠動脈カテーテル治療(percutaneouscoronary intervention:PCI)における拡張機序の解明やPCI治療のガイド,冠動脈硬化の進展/退縮を評価するツールとして一定の役割を果たしてきた.本邦では,全PCIの80%以上の症例がIVUSガイド下に行われている.一方でOCTはヒト冠動脈に臨床応用されるようになり10年程度経過したところであり,今後さらに発展が期待されるイメージング機器である.IVUSは冠動脈造影検査(coronary angiography:CAG)より高い解像度をもつため,冠動脈の正確な計測が可能となり,冠動脈拡張用のバルーンやステントのサイズ決定に有用である.またCAGは内腔の投影像のため動脈硬化自体を評価する手法でないが,IVUSは血管外膜まで到達する深達度をもつため,CAGで決定するステントサイズより大きいステントを安全に留置することが可能になった.最近の薬剤溶出性ステント(drug eluting stent:DES)を用いた大規模臨床研究において,IVUSガイド下にDESを留置するとCAGガイドと比較して1年間のステント血栓症のリスクが6割減少することが示された.さらに,IVUSの超音波信号を解析することにより,プラークの構成成分(脂質成分,線維性成分,カルシウム成分)を定量化することが可能になり,動脈硬化の易破綻性の評価も可能となったことは意義深い.これらの特性を活かして,スタチンにより動脈硬化が退縮することや安定化することなどが明らかになった.OCTの解像度は10~20μmであり,IVUSの解像度(100~200μm)と比較してさらに10倍の解像度をもつ.このため,IVUSでは不可能であった線維性の被膜の厚みを測定することが可能となり,IVUSと異なる側面からプラークの易破綻性を評価することができるようになった.さらに,第一世代のDESは超遅発性のステント血栓症が臨床上の問題点であったが,OCTにより第一世代のDESではステントストラット内腔面に新生内膜被覆が長期間にわたり遅延することが生体内において明らかになり,生体親和性の高い第二世代のDESの開発に役立った.その一方でOCTは組織深達度が1~2mm程度しかなく,特に病変部位において血管外膜を観察することができないことが多い.すなわちIVUS, OCTともに利点,欠点をもつ相補的なイメージング機器であり,ハイブリッドカテーテルの開発が待たれる.動脈硬化の診断と治療の現況と展望―包括的戦略による動脈硬化性疾患制圧へむけた取り組み