カレントテラピー 33-5 サンプル

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82 Current Therapy 2015 Vol.33 No.5506Ⅰ はじめに高血圧は脳心血管イベントの大きな要因のひとつであるが,最近ではアルツハイマーなどのさまざまな疾患のリスク因子になることも明らかとなってきた.しかし,世界的にみて高血圧患者数は増加の一途をたどっており,2008年の世界保健機関(WHO)の調査では25歳以上で高血圧と診断される人は世界で10億人を超えると報告している.日本国内での高血圧患者数も4,000万人を超えるともいわれるが,治療を受けている患者のうち血圧が良好にコントロールできている割合は,男性では約30%,女性では約40%にとどまっているとされている.降圧目標を達成するために多剤を併用することも一般的となり,服用薬剤数を減らす目的で合剤の開発も進められている.このように,さまざまな降圧剤の臨床応用が可能になった現在においても,より有効な薬剤の開発が望まれている.アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB),レニン阻害薬などのレニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬は比較的副作用が少なく,降圧のみならず心不全や蛋白尿などの治療にも有用である可能性が指摘されており,高血圧治療の中核を担うようになってきた.実際,『高血圧治療ガイドライン2014』でも,多くの高血圧患者に対しての使用が推奨されている1).しかし,実際にはRAS阻害薬のみで十分な降圧がみられない場合も多く,いくつかのRAS阻害薬を重複投与すると,特に腎機能低下症例では高カリウム血症をはじめとした副作用を生じることも多い2).このようなRAS阻害薬の問題点に対して,ARBの作用と中性エンドペプチダーゼ(neutral endopeptidase:NEP)阻害作用を併せもつangiotensin receptor?NEP inhibitor(ARNi)というカテゴリーの薬剤としてLCZ 696がLCZ696西山 成** 香川大学医学部薬理学教授動脈硬化の診断と治療の現況と展望―包括的戦略による動脈硬化性疾患制圧へむけた取り組みレニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬は比較的副作用が少なく,高血圧治療薬の中核を担うようになってきた.しかし,実際にはRAS阻害薬のみで十分な降圧が得られない場合も多い.さらに,いくつかのRAS阻害薬を重複投与すると,特に腎機能低下症例では高カリウム血症をはじめとした副作用を生じることが多い.このようなRAS阻害薬の問題点に対して,最近,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)の作用と,中性エンドペプチダーゼ(neutral endopeptidase:NEP)阻害作用を併せもつ新しい薬剤〔angiotensin receptor-NEP inhibitor(ARNi)〕LCZ696が開発された.ARNiというカテゴリーの薬剤であるLCZ696は,以前報告されたバソペプチダーゼ阻害薬のような血管浮腫や咳などの目立った副作用が少なく,ARBよりも強い降圧や心不全予後の改善作用などが報告されており,今後の臨床試験の発表に注目が集まっている.a b s t r a c t