カレントテラピー 33-5 サンプル

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Current Therapy 2015 Vol.33 No.5 61治療の進歩485リックになったアメリカでは,医療経済上も評価できる内容のようである.Ⅳ わが国の動脈硬化性疾患ガイドラインの変遷わが国で高脂血症に関するガイドラインを提示したのは1997年が初めてである.アメリカのガイドラインが発表されてから約10年かかっている.当時は,わが国の疫学データも治療エビデンスもほとんどなかったためである.初版は『高脂血症診療ガイドライン』10)という名称で出版された.すでに述べたとおり,当時の疫学・臨床データでは十分なことがいえず,ほとんどコンセンサスに近いもので高脂血症の診断基準と,治療目標値を提案した.当時,わが国のコレステロールレベルが上昇し,ほぼアメリカ並みになっていることを問題視して,慌てて作成した感は否めない.しかし,社会的インパクトは大きく,多くの臨床医の賛同を得ることができた.その後,J -LITという,いわば実臨床のなかから生まれた疫学データが発表された11).これは,高脂血症5万人の5年にわたる調査から生まれたもので,アメリカのFHSと同様,危険因子の重なりが動脈硬化発症に大きくかかわるというわが国の大規模な,いわば“疫学データ”をもとに,患者の危険度分類をし,そのカテゴリーごとに治療方針を決定するという合理的なガイドラインとして2002年に『動脈硬化性疾患診療ガイドライン2002年版』が発表された12).しかし,残念なことにわが国では治療エビデンスがないために,本当に日本人の高コレステロール血症患者を治療することが臨床的に妥当なのか十分なエビデンスはなかった.ところが,2005年になってMEGA Study13), JELIS14)という大規模な臨床試験が相次いでAHAで発表され,Lancet誌にも取り上げられた.これらの治療エビデンスをもとに2007年『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版』15)は改訂され,発行された.そして,2012年わが国の約20年の追跡調査であるNIPPON DATA80という疫学調査16)から,患者の絶対リスク(10年間に心筋梗塞で死亡する確率)を推定することが可能になった.これをもとに患者のリスクカテゴリーを分けることにし,治療指針もこのカテゴリーに合わせて行うということで改訂を加えた17).以下に,わが国の最新のガイドラインの概要を示す.Ⅴ 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版2012年に発表されたガイドラインの改訂のポイントASCVD YesNoYesYesYesNoNoNo>75歳年齢≦75歳LDL-C≧190 mg/dL1型,2型糖尿病年齢40-75歳10年間ASCVDリスク≧7.5%年齢40-75歳スタチンによる動脈硬化性疾患予防効果は明らかではない高強度スタチン中強度スタチン中強度スタチン中強度~高強度スタチン高強度スタチン高強度スタチン(10年間ASCVDリスク≧7.5%)ASCVD:ACS及びMI,安定,不安定狭心症,血行再建術,TIA,脳卒中,PADの既往図1動脈硬化性疾患予防のためのスタチン治療の推奨