カレントテラピー 33-5 サンプル

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60 Current Therapy 2015 Vol.33 No.5484その後,アメリカではMRFITという大規模な疫学調査2)が行われ,コレステロールと虚血性心疾患の発症率との関係が明確になった.それに加えて,コレスチラミンを用いプラセボを対照においた二重盲検大規模臨床試験が1984年に発表された3).これらの情報をもとに,1988年にコレステロールの治療ガイドラインである『National Cholesterol Education Program-Adult Treatment Panel(NCEP-ATP)』4)といういわばガイドラインの元祖ともいうべきものが発表された.当時は治療対象とすべきコレステロールの基準値を示したに過ぎないが,画期的であり,全世界に大きな影響を与えた.このころからスタチンが臨床現場で使用されるようになり,より容易にコレステロール低下治療ができるようになった.このような現状を踏まえ,最もリスクの高い二次予防でコレステロールの高い患者を対象とした大規模臨床試験が発表された.1994年に発表された4Sという試験5)は4,444人を2群に分けてプラセボ対照とした大規模な二重盲検試験である.第一次目標は総死亡率の低下であり,見事に30%の死亡率の低下を示し,その多くは心血管系によるものであった.この試験により,コレステロール低下療法の意義が認められ,その後多くのスタチンを用いた同様の試験が行われた.米国のガイドラインは,このような大規模臨床試験をもとに,その都度改訂が加えられた.NCEP-ATP-Ⅱ6)は,主としてFHSのデータをもとにHDL-Cをnegative riskとして定義したが,さらに二次予防を厳格に治療するということで改訂が加えられた.NCEP-ATP- Ⅲ7)はメタボリックシンドロームがリスク病態として取り入れられたが,同時に疫学調査をもとに糖尿病を二次予防と同等に扱うという趣旨で改訂が加えられた.さらに,次々と公表された二次予防の厳格な治療を検討した大規模臨床試験から,二次予防のなかでもより厳格に治療すべき患者としてvery high risk群が定義され,オプションとしてLDL-Cを70mg/dL未満にすることを推奨する論文が発表された8).表1にNCEP -ATP - Ⅲの概要を示す.Ⅲ 新たなアメリカのガイドライン─ACC/AHAガイドライン─2004年のATP- Ⅲ updateが発表されて,しばらくは空白時間があったが,2013年になり,“改定版”としてACC/AHAガイドラインが発表された9).しかし,これはそれまでのNCEPとはかなり異なった内容であり,論文の執筆者も大きく異なることとなった.もちろん,これまでのNCEPの結果を尊重しつつ,治療エビデンスを忠実に守った内容である.基本的には,治療すべき患者群を設定し,治療としてはスタチンに限り,リスクの重みに応じてスタチンの強度も考慮するというものであり,それまでの繊細な治療を模索してきたガイドラインとは異なり,図1に示したようにリスクに応じてスタチンさえ使用すれば,それなりに治療効果が得られるという,“Fireand forget”という軍事用語に例えられる,やや粗雑な印象を受けるガイドラインである.しかし,患者対象を明確にし,治療法も単純化したということから,治療現場では治療の仕方が簡単になったという評価もできる.さらにはほとんどスタチンがジェネ表1 LDL-Cの治療目標値と治療開始基準値Risk CategoryLDL Goal(mg/dL)LDL Level at Which toInitiate TherapeuticLifestyle Changes(mg/dL)LDL Level at Which toConsider Drug Therapy(mg/dL) CHD or CHD Risk Equivalents  (10-year risk>20%)<100 ≧100 ≧130(100~129:drug optional)† 2+ Risk Factors  (10-year risk≦20%)<130 ≧130 10-year risk 10~20%:≧13010-year risk<10%:≧160 0-1 Risk Factor‡ <160 ≧160 ≧190(160~189:LDL-loweringdrug optional)