カレントテラピー 33-5 サンプル

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Current Therapy 2015 Vol.33 No.5 59483Ⅰ はじめに診療ガイドラインは,臨床現場を守る医師に対する一定の診療指針を示すものであり,もちろん法律ではない.しかし,学会はある一定の基準をもって,科学的に判断するに足る臨床データの収集および分析をして,さらには学会内の多くの専門家の間で議論を重ね,現状で最も信頼できる情報を医療現場に提供するのがひとつの役割であり,それが診療ガイドラインである.診療ガイドラインが作成されるにはそれなりの情報が必要である.その情報がある程度蓄積されてきたのが最近のことであり,いち早くアメリカでガイドラインが作成されたのもそこに理由がある.ここでは,まず,アメリカでのガイドラインの作成過程を概観したい.いわば,世界のガイドラインの基盤になっているからである.その後,わが国の動きについて述べたい.Ⅱ アメリカのガイドライン─NCEP-ATP ─アメリカをはじめ欧米諸国では動脈硬化性疾患がきわめて多いことから,19世紀半ばから動脈硬化性疾患発症の原因検索がなされてきた.米国の国家的な疫学調査として1948年に開始されたFraminghamHeart Study(FHS)1)があり,この疫学調査の果たした役割は大きく,世界の動脈硬化性疾患の危険因子に関するbible ともいわれている.本コホート研究から,高コレステロール血症,高血圧,喫煙や糖尿病が危険因子として抽出され,国家レベルでコレステロール低下,血圧低下,禁煙指導などの生活習慣の改善を求め,動脈硬化性疾患死の半減というきわめて大きな成果を上げている.* 帝京大学臨床研究センターセンター長動脈硬化の診断と治療の現況と展望―包括的戦略による動脈硬化性疾患制圧へむけた取り組み日米の動脈硬化性疾患予防ガイドライン寺本民生*欧米においては,動脈硬化性疾患,特に心疾患は主要な死因疾患で,その予防対策は喫緊の課題であり,いち早くアメリカを中心に診療ガイドラインが策定されてきた.また,動脈硬化性疾患の危険因子の重みは各地域により異なるので,ガイドライン作成には,その地域住民の疫学データと治療エビデンスが重要であり,アメリカでは,いち早くそれらが集積されていたという実績がある.わが国は,必ずしも心疾患が主要な死因疾患ではなかったことから,脂質については残念ながら大規模な疫学調査が多くはなかった.そのため,ガイドラインづくりはアメリカのそれより約10年遅れて発表された.しかし,これはわが国の独自の疫学調査を重視したガイドラインであり,アジアでは初めてのガイドラインでもある.したがって,治療対象のコレステロールの数値などはアメリカとはやや異なるものの,策定過程や治療ストラテジーなど,理念としてはほぼ同様である.