カレントテラピー 33-5 サンプル page 13/32
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カレントテラピー 33-5 サンプル
22 Current Therapy 2015 Vol.33 No.5446結晶により自然免疫による生体の炎症応答に重要なインフラマソームが活性化され,IL - 1βが放出され炎症が増強されることも明らかとなっている3).さらに,肥満細胞(mast cell)由来のIFN -γ,IL - 6 4)や血小板由来のCD40 ligand(CD154),RANTES,IL- 6が動脈硬化の進展に関与することや5),多核白血球由来の活性酸素やMPOが粥腫ラプチャーの進展に関与することが報告されている6).このように,高LDL-C血症に伴い,血液細胞,血管構成細胞と,それらが放出するサイトカインが起こす炎症反応が動脈硬化の発症および進展に重要な役割を果たす.Ⅳ 動脈硬化とHDLひとたび蓄積したプラークは悪化する一方なのだろうか.体内には生成されたプラークに対して,プラークを退縮させようとする経路も存在する.それがHDLである.GordonらによるとHDL -Cが1mg/dL低下すると虚血性心疾患の発症は2~3%増加するとされ,その役割は重要である.マクロファージ内でコレステロールはコレステロールエステルとして蓄積されている.HDLは中性コレステロールエステル水解酵素(NCEH)をもっており,この作用によってコレステロールエステルを遊離コレステロールとする.遊離コレステロールはapo A -Ⅰがトランスポーターに結合することで起こる経路やABCG1などのトランスポーターなどと結合して起こる経路,さらに受動拡散を通してHDL内へ取り込まれる.このようにしてHDLは末梢組織や血管壁からコレステロールを回収し肝臓に戻す,逆転送経路を担っている.HDLはそれ以外にも内皮細胞からのNO産生促進作用や抗酸化作用などもあるとされ,HDLが減少した場合はさまざまな経路に機能不全を起こし動脈硬化の進展が抑制できなくなる.Ⅴ その他のリポ蛋白代謝異常と動脈硬化LDL -C低下療法を行っても70%はイベントを発症しており,LDL -C以外の残余リスクに現在注目が集まっている.Residual Risk Reduction Initiative(R3i)の報告ではLDL -C以外のリスクとしてsmall denseLDL,TG richリポ蛋白やそのレムナントが挙げられている.1 small dense LDLLDL は比重1 . 019~1 . 063 g/mL,平均粒子径20~26 nm の幅広いリポ蛋白の集合体である.1980年代後半にサイズが小さいLDLはその他のLDLと質的に異なる可能性が指摘された.Apo B/LDL-C>1.0であらわされる小さく重いLDLはsmall dense LDLと呼ばれ,その直径は25.5nm以下で比重は1.044~1.063に分布する.このsmall dense LDLを多く持つ人はそうでない人よりも心筋梗塞になる危険性が3倍高かった7).その後の研究でsmall dense LDL は粒子径の大きいLDLと比較しLDL受容体に対する結合親和性が悪く組織に取り込まれにくく,酸化変性を防ぐビタミンEやユビキノールが少ないことから酸化を受けやすく,血管壁のヘパラン硫酸プロテオグリカンとの結合親和性が高い.このようにLDL中のコレステロール量のみならずLDLの質に関しても考える必要がある.2 レムナントリポ蛋白空腹時の血清TGにはVLDL,IDL,カイロミクロンレムナントが含まれる.後者2つはレムナントリポ蛋白と呼ばれ,動脈硬化惹起性である.ちなみにレムナントとは「残り物」を意味し,通常は代謝され消えてなくなるものであるが,何らかの理由で脂質代謝が潤滑に行かなくなると,レムナントリポ蛋白が増加を示す.1979年,Zilversmitによってレムナントが動脈硬化発症に影響するという仮説が提唱された8).その後の研究でFujioka らはレムナントが直接血管内皮下へ侵入し動脈硬化形成の原因になると報告している9).また,レムナントはMCP - 1などの炎症反応惹起作用,接着分子ICAM - 1やVCAM - 1発現を誘導するとされている10).さらに冠動脈においてRhoキナーゼの活性化に関与し冠攣縮を誘発するともいわれており,多面的に動脈硬化へ関与していることが明らかにされつつある.特にインスリン抵抗性を有する肥満2型糖尿病患者やメタボリックシンドローム患