カレントテラピー 33-5 サンプル

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20 Current Therapy 2015 Vol.33 No.5444Ⅰ はじめに動脈硬化は心筋梗塞や脳梗塞など生活の質(QOL)を大きく低下させ,ひいては生命を脅かすさまざまな疾患の原因となる.これまでに多くの臨床試験が行われ,高血圧や糖尿病,喫煙等とともに脂質異常症がその主たる危険因子であることが示されてきた.脂質異常症のうち,LDLコレステロール(LDL-C)高値が冠動脈疾患の最も強い危険因子であることは多くのエビデンスによって支持されている.一方,LDL -Cを低下させることによって抑制されるイベント発症率は30%であり,動脈硬化抑制においてはLDL-Cのみの治療では不十分であることもわかってきている.食生活の欧米化が指摘されて久しいが,脳・心血管疾患予防のため脂質異常症による動脈硬化を抑制することは今後ますます重要になると予想される.本稿では動脈硬化の成因と病態への脂質異常の関与を概観する.Ⅱ 動脈硬化と脂質との関連動脈硬化は①粥状動脈硬化,② Monckeberg 型中膜硬化,③細動脈硬化を含んだ概念である.このなかで虚血性心疾患等の血管障害を主に生じさせるのは,粥状動脈硬化である.粥状動脈硬化巣は脂質,特にコレステロールエステルの蓄積を中心(脂質コア)として,血球由来の単球・マクロファージ等の細胞成分が取り囲み,さらに結合線維と基質の蓄積から構成されている.脂質コアを取り囲む細胞群は,特に肩の部分(shoulder region)にグループをなして存在し,単球・マクロファージ由来の泡沫細胞に加えてT リンパ球が存在する.1913年,ロシアの病理学者Nikolaj AnitschkowはNew Zealand 白ウサギに0 . 1~2%のコレステロー*1 千葉大学大学院医学研究院細胞治療内科学講座*2 千葉大学大学院医学研究院細胞治療内科学講座准教授*3 千葉大学大学院医学研究院細胞治療内科学講座教授動脈硬化の診断と治療の現況と展望―包括的戦略による動脈硬化性疾患制圧へむけた取り組み動脈硬化症と脂質異常山本 雅*1・竹本 稔*2・横手幸太郎*3動脈硬化は虚血性心疾患や脳血管障害をはじめとしたさまざまな疾患を引き起こす.動脈硬化の主たる原因として脂質異常症が知られており,そのなかでも高LDLコレステロール(LDL-C)血症が最も強い危険因子である.LDL-Cは血管内皮下で酸化を受け,これをマクロファージが取り込み泡沫化する.この過程でプラークが形成されるため,LDL-Cを低下させることが動脈硬化の抑制に重要である.しかしながらLDL-Cを低下させることで抑制できるイベントは約30%であり,LDL-C以外の脂質異常に関して注目が集まっている.本稿では動脈硬化の発症・進展メカニズムを概説するとともに,small dense LDLやレムナントリポ蛋白など,LDL-C以外の因子と動脈硬化との関連に関してもこれまでの知見をまとめる.