カレントテラピー 33-4 サンプル page 8/32
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カレントテラピー 33-4 サンプル
Current Therapy 2015 Vol.33 No.4 11睡眠障害の診断と治療329さらに寝室が眠れず苦しむ場所という条件づけの形成を防ぐために,就床して20分程度で入眠できない時は離床するよう指導する7).2)睡眠制限法不眠症患者は,少しでも眠ろうと長く床のなかで過ごしており,これが不眠の原因となる.特に,中年期および老年期にみられる中途覚醒や熟眠障害を伴う不眠でこうした傾向が強い.中年期以降,加齢により,生理的に睡眠時間が減少してくる(図1)8)が,一方で家庭内や社会的役割の減少(退職や子どもの自立など)により生活時間に余裕が出てくるために床のなかで過ごす時間が増える.つまり,身体が必要とする以上に床のなかで毎日長く過ごすようになる.睡眠制限法は就床から起床まで床の上で過ごす時間(床上時間)を制限し,床上時間と身体が自然に要求する睡眠時間とのギャップを少なくするとともに,軽度の断眠効果を利用することで不眠を改善する治療法である7).臨床場面では,まず患者に2 週間程度,睡眠日誌を記録させ,実際に眠れている時間の平均(平均睡眠時間)を算出し,この平均睡眠時間に合わせて床の上で過ごす時間を制限する.患者は8時間眠らないといけないなどのように睡眠時間そのものにこだわりを持っている場合が非常に多いため,睡眠に関する理解が前提条件となる.この時の睡眠時間の目標値は,若年成人および中年で6 . 5~7時間,老年では6時間程度とする.2 薬物療法1)薬物療法を始める前に適切な睡眠環境のもと適切なタイミングで睡眠をとっているにもかかわらず,夜間睡眠に何らかの不眠に関する訴え(入眠困難,中途覚醒,早朝覚醒)があって,不眠のため昼間の生活に何らかの社会的,職業的,学業的な支障が生じており,睡眠衛生の指導を行っても十分改善が得られない場合において睡眠薬の適応となる.治療の開始時にはまず治療のゴールを定める.加齢の影響など睡眠時間には個体差があるためどのような睡眠が対象患者に必要(適切)なのかを明確にする.また何らかの精神もしくは身体疾患による不眠(二次性)があるかどうか,不眠診断が適切かを確認する.二次性の不眠の場合は原疾患の治療を優先する.また高齢者や合併症の有無などのリスク評価も行っておき,投薬量や薬物の選択時に考慮する.治療の必要性があると判断した場合には,必ず睡眠衛生指導を最初に行い,改善がない場合に薬物療法を検討する.睡眠薬の適正使用のため,『睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン』の不眠症の治療アルゴリズムを参照されたい(図2)9).2)薬物療法薬物療法に用いられる薬物は①GABAa受容体作動薬(BZ系睡眠薬,非BZ系睡眠薬),②メラトニン受容体作動薬,③オレキシン(orexin:Ox)受容体阻害薬,④漢方薬,⑤OTC(一般用医薬品,over-the-counter drug)などがある.BZ系睡眠薬は,現在,最も汎用されている薬物のひとつである.BZ系睡眠薬は睡眠誘発作用以外にも,抗不安作用,抗痙攣作用,筋弛緩作用なども有する.BZ 系睡眠薬はω 1受容体への作用による睡眠作用と,ω2受容体に対する抗不安作用および筋弛緩作用をもつ.ω1受容体選択性の高い薬剤は,転倒入眠障害(超短時間型,短時間型)中途覚醒,早朝覚醒(中時間型,長時間型)神経症的傾向が弱い場合脱力・ふらつきが出やすい場合(抗不安作用・筋弛緩作用が弱い薬剤)ゾルピデムゾピクロンクアゼパム神経症的傾向が強い場合肩こりなどを伴う場合(抗不安作用・筋弛緩作用を持つ薬剤)トリアゾラムブロチゾラムエチゾラムなどフルニトラゼパムニトラゼパムエスタゾラムなど腎機能障害,肝機能障害がある場合(代謝産物が活性を持たない薬剤)ロルメタゼパムロラゼパム表1睡眠障害の対応と治療ガイドライン〔参考文献7)より引用〕