カレントテラピー 33-4 サンプル

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カレントテラピー 33-4 サンプル

Current Therapy 2015 Vol.33 No.4 67睡眠障害医学の最前線3851時間の差,覚醒,起床では約30分の差,midsleep時刻では約45分の差がみられた.そして,朝型- 夜型の差(朝型<夜型)は,床内時間,床内時間+昼寝に比べ,睡眠時間,睡眠潜時,睡眠慣性でより顕著であった.一方,週末では,いずれの時刻も朝型に比べ夜型では約1時間遅れで(朝型:朝7時起床,夜9時就床,夜型:朝8時起床,夜10時就床),睡眠潜時および睡眠慣性も長かったが,睡眠時間(10時間弱),床内時間(10時間半),床内時間+昼寝(11時間)のいずれにおいても,朝型,中間型,夜型に差はみられなかった.さらに,行動の下位尺度(各得点)との関連をみると,夜型化傾向(CCTQ -M/E総得点)と多動との間に有意な関連が示唆された18).Ⅴ 対策以上より,4~6歳の幼児における朝型,中間型,夜型の頻度は,それぞれ約40%,約50%,約10%と推測された.さらに,先行研究の結果とも合わせ,夜型化傾向と問題行動(特に易刺激性や多動)との間には有意な関連があることが示唆された.夜型化傾向の幼児では,睡眠- 覚醒リズムと平日の生活スケジュールとの間にミスマッチが生じていることと(特に起床時刻など),そのことによる平日の睡眠時間の短縮という二重の負荷が,その理由として考えられる.対策として,次の3点が考えられる.1)クロノタイプは,生物学的要因(遺伝子・年齢・性)のほかに,環境要因(光曝露や地理的位置など)や社会的要因(食事やライフスタイルなど)によっても影響を受ける.そこで,まず,睡眠相後退症候群の光治療に準じるような方法で,生活のなかでの光をコントロールする.朝の光は睡眠相を前進させるので,習慣的な起床時刻の1~2時間前から寝室の中に光が入るようにして,しっかり光を浴びる.夕方~夜の光は逆に睡眠相を後退させるので,夜間の過剰な光曝露(例えば,就寝前のテレビやビデオ視聴,携帯電話の使用,夜間の外出など)を避ける.朝食を抜かず,夕食は早めに済ます(午後7時前まで).朝型と夜型のリズムの差は約1時間であるが,約30分を目安に,ゆっくり時間をかけて,睡眠相を前進させるように生活のスタイルを変える.生活指導の詳細については,Nakadeらの論文を参照されたい19).2)環境要因や社会的要因を変える努力をしてみても,夜型のままで留まってしまうケースも考えられる.生活スケジュールのない週末の睡眠- 覚醒リズムが,生来のリズム(体内時計)に近いものなのかもしれない.そうであれば,このようなケースに対しては,社会的時計を少しゆっくり後ろに進め(少し遅めの通園など),幼児のクロノタイプと生活リズムの乖離をできるだけ少なくする工夫も一考すべきであろう.また,このようなケースのなかには治療を必要とする場合も含まれている可能性があるので,そういったケースの見極めも重要であると思われる.3)夜型化傾向の幼児では,平日の夜間の睡眠時間の短さが際立ってしまうので,睡眠時間を確保しようと,その子どもの就床時刻を早めがちである.しかし,睡眠- 覚醒リズムがそのままの状態で就床時刻だけを早めると,入眠時間が長くなってしまうだけ,あるいは,ベッドタイムレジスタンス(就床を促しても抵抗する)を惹起するだけで,逆効果となる場合が考えられる.まず,睡眠- 覚醒リズムを前進させることが先で,それがうまく行けば,平日の夜間の睡眠時間の短縮は自然と解消されるはずである.Ⅵ おわりに幼児期の子どもに焦点を当て,睡眠-覚醒リズム,朝型- 夜型(クロノタイプ),それらによって影響を受ける問題行動について,これまでに行われた疫学研究および筆者らが最近行った疫学研究を紹介し,その対策について述べた.特に,夜型化傾向と攻撃的行動や易刺激性との間に有意な関連が示唆された点は注目に値する.子どもの夜型化した睡眠-覚醒リズムを前進させ,生活リズムとの乖離をできるだけ少なくすることが重要である.