カレントテラピー 33-4 サンプル page 17/32
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カレントテラピー 33-4 サンプル
64 Current Therapy 2015 Vol.33 No.4382Ⅱ これまでに行われた幼児の朝型-夜型に関する疫学研究体内時計による概日リズムは,睡眠-覚醒の時刻,深部体温,メラトニン,コルチゾールといったホルモンなどの測定値によって,間接的に測定することができる.そして,朝型人間か夜型人間かの概日リズムの表現型として,クロノタイプがある.朝型であれば,「最も調子が良い」リズムは一日のうちの比較的早い時間帯にあり,夜型であれば比較的遅い時間帯にある.そして,クロノタイプは,生物学的要因(遺伝子・年齢・性)のほかに,環境要因(光曝露や地理的位置など)や社会的要因(食事やライフスタイルなど)とも関連している5).子どものときは朝型傾向を示すが,成長するにつれ夜型化傾向を示すようになり(夜型化のピークは20 歳前後頃),その後,再び朝型化傾向を示すようになる6).これまでに行われた多くの朝型- 夜型に関する疫学研究は,夜型化傾向が強いとされる,中高生,大学生,青年期の成人を対象としたものであり,幼児を対象とした疫学研究はきわめて少ない7).その理由は,幼児を対象とした調査方法の難しさに加え,生来,幼児は早寝早起き(朝型)と考えられていたことによると思われる.しかし,午後10時以降に就寝する幼児の割合が急増したことから(2000年のNHK国民生活時間調査),専門家の間で危機感が広がった8).このような背景から,幼児を対象とした朝型- 夜型に関する疫学研究は,夜型化社会が顕著な日本から,その先駆的な研究成果が発表されている7).Yokomakuらは,首都圏在住の4~6歳児を対象に,子どもの夜型,睡眠- 覚醒の時刻および行動について,保護者に対して,自記式質問票と2週間の睡眠日誌を用いた調査を行った(2005年6~8月)9).対象者140人のうち,解析対象者は,調査に参加し欠測値のなかった135人であった.この調査では,①大人と一緒に午後9時以降に外出する(2回以上/1週間),②午後11時以降に就床する(4 回以上/ 1週間),③午後9時以降に帰宅する(3回以上/1週間)のうち,1つ以上に当てはまるものをA群(夜型),それ以外をB群(非夜型)と定義された.行動を評価する尺度には,Child Behavioral Checklist(CBCL)が用いられた.113項目からなるCBCLは,8つの下位尺度(ひきこもり,身体的訴え,不安/抑うつ,社会性の問題,思考の問題,注意の問題,攻撃的行動,非行的行動)と2つの上位尺度(内在化尺度,外在化尺度)から構成される.子どもの年齢,性別,幼稚園・保育園,兄弟姉妹の有無,出生順位,母親の年齢・職業については,両群に差はなかった.B群に比べ,A群では,起床時刻・就床時刻が遅く,夜間の睡眠時間が短い一方で昼寝の時間が長かったが,両者の総計である総睡眠時間は短かった.また,A群のほうが,起床時刻と就床時刻,それぞれの幅が長かった.B群に比べ,A群では,3つの下位尺度(ひきこもり,不安/抑うつ,攻撃的行動),上位尺度および全体の尺度で,それぞれの得点が高かった.Haradaらは,高知市在住の0~15歳の子ども1,055人(このうち幼稚園児740人)を対象に調査を実施し,子どもの朝型- 夜型,主観的睡眠,朝食(トリプトファンの摂取)および行動に関して,幼稚園児については,保護者に対し自記式質問票を用いた調査を実施した(2004 年6~11 月)10).朝型- 夜型の評価には,成人で用いられるMorningness-EveningnessQuestionnaire(MEQ)11)を子ども用にした尺度が用いられた.行動については,「日常生活で,子どもがささいなきっかけで怒ってしまう頻度(易刺激性)」,「日常生活で,子どもが落ち込んでしまう頻度(抑うつ)」の各項目に関して,リカート尺度「しばしば,ときどき,まれに,全くない」を用いて尋ねた.幼児では,MEQの得点が低いほど(夜型化),易刺激性が増加していた.Wadaらは,同様の方法を用い,日本(高知市 北緯33度)の0~6歳の697人とチェコ共和国(南ボヘミア 北緯49~51度)の0~8歳の627人の子どもを対象に,両国間の比較を行った(2007年6~11月)12).その結果,日本人の子どものほうが,就床時刻が1 . 3時間,睡眠時間が1時間短く,夜型化傾向と易刺激性を示していた.両群とも,夜型化傾向が強いほど,易刺激性との関連がみられた.以上の研究結果より,夜型化傾向の幼児では,何らかの問題行動との有意な関連がみられ,その傾向