カレントテラピー 33-4 サンプル page 16/32
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カレントテラピー 33-4 サンプル
Current Therapy 2015 Vol.33 No.4 63381Ⅰ はじめに睡眠と覚醒は,体内にある生物時計(体内時計)による時刻依存性(サーカディアンリズム)と,時刻に依存せずに覚醒時間の長さによって量と質が決定される恒常性維持機能(ホメオスターシス)によって制御されている.主として視床下部視交叉上核に存在する体内時計は,24 時間よりやや長い独自の概日リズムを刻みながら,太陽の日没による明暗サイクル(日時計),生活スケジュールや身体活動といった非明暗サイクル(社会的時計)と同調して,24時間の睡眠- 覚醒サイクルを回している.睡眠は,生命の維持に不可欠であるとともに,脳の発達にも大きく関与していることが示唆されている.そのひとつの根拠として,大人に比べ,子どもでは総睡眠時間とレム睡眠の相対的および絶対的な量が圧倒的に多いことが示されている1),2).しかし,近年,大人社会の夜型化が進み,その影響で子どもの睡眠- 覚醒リズムが乱れ,行動などに問題を引き起こすのではないかという懸念が広がっている.そこで,本稿では幼児期の子どもに焦点を当て,睡眠- 覚醒リズム,朝型- 夜型(クロノタイプ),それらによって影響を受ける問題行動について,これまでに行われた疫学研究および筆者らが最近行った疫学研究を紹介し,その対策について述べたいと思う.なお,本稿では取り上げない,治療を要する子どもの睡眠障害(概日リズム睡眠障害を含む)については,Sheldonらの教科書3)や亀井と岩垂による総説4)などを参照されたい.* 国立保健医療科学院統括研究官(疫学調査研究分野)睡眠-覚醒障害と関連疾患― その対策子どもの睡眠土井由利子*幼児期の子どもに焦点を当て,睡眠- 覚醒リズム,朝型- 夜型(クロノタイプ),それらによって影響を受ける問題行動について,これまでに行われた疫学研究および筆者らが最近行った疫学研究を紹介し,その対策について述べる.4~6歳の幼児におけるクロノタイプの頻度は,朝型が約40%,中間型が約50%,夜型が約10%であった.朝型と夜型のリズムの差は約1時間,夜型では平日の睡眠時間が短縮していたが,週末ではクロノタイプによる睡眠時間に差はみられなかった.さらに,夜型化傾向と攻撃的行動や易刺激性との間に有意な関連が示唆された.クロノタイプは,生物学的な要因のほかに,光などの環境要因や食事などの社会的要因と関連があるので,光環境や社会的要因を調整して夜型化した睡眠- 覚醒リズムを前進させ,生活リズムとの乖離を少なくすることが重要である.