カレントテラピー 33-3 サンプル page 32/36
このページは カレントテラピー 33-3 サンプル の電子ブックに掲載されている32ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。
概要:
カレントテラピー 33-3 サンプル
Current Therapy 2015 Vol.33 No.3 83Key words301心房細動患者の死因大分大学医学部循環器内科・臨床検査診断学講座 池邉有希大分大学医学部循環器内科・臨床検査診断学講座助教 篠原徹二大分大学医学部循環器内科・臨床検査診断学講座教授 髙橋尚彦1 はじめに心房細動は日常診療において多く遭遇する不整脈のひとつである.その有病率は70歳代では2%,80歳代以上では3%と加齢とともに増加しており,高齢化社会を迎える本邦においては,2050年の心房細動人口は全人口の1%以上になると予測されている.心房細動発症の危険因子については,報告された集団の年齢や基礎疾患などの背景の違いから報告によって差異はあるものの,加齢や糖尿病,高血圧症,うっ血性心不全,リウマチ性・非リウマチ性弁膜症,心筋梗塞,低HDL -C血症,肥満,アルコール摂取,喫煙などが挙げられる.日本国内での報告によると心房細動群の全死亡,脳卒中死,心血管死の相対危険度は2.0と高く,年齢層により変化はあるものの,非心房細動群と比して死亡リスクが高いことが報告されている(Suzuki et al:J Cardiol 2011).欧米の報告においても,男性心房細動患者(55~74歳)10年間のfollow up期間内死亡率は非心房細動群では30%であったのに対し,心房細動群で62%と有意に高値であった.さらに,75~94歳の高齢心房細動患者においてはより死亡率が高かった(Benjamin et al:Circulation 1998).心房細動患者の死亡原因に関しては日本国内,欧米ともに虚血性心疾患が最も多く挙げられ,日本におけるその年齢調整死亡率は非心房細動群において249(10万人/年)であるのに対し,心房細動群では1, 342(10万人/年)であった.次いで脳卒中死が342(10万人/年)であった.また心房細動治療に関する死亡原因として,抗不整脈薬関連死や抗凝固療法中の大出血の報告もある.その他,悪性腫瘍や呼吸器疾患などの心血管疾患に関連しない原因での死亡率増加も挙げられているが,因果関係は明らかではない.2 結語心房細動の患者数は社会の高齢化とともに増加の一途をたどっている.心房細動患者の死亡率は,非心房細動患者と比較して有意に高い.その死亡原因についてはいくつかの大規模臨床試験において,虚血性心疾患や脳卒中との関連が示されている.このため,心房細動患者においては,高血圧症,糖尿病,脂質異常症,喫煙および肥満などの心血管病危険因子を適切に治療することは重要である.また心房細動治療関連死も少なくないことからも,心房細動患者に対する治療選択については慎重に判断する必要がある.