カレントテラピー 33-3 サンプル

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72 Current Therapy 2015 Vol.33 No.3290によるレジスタンストレーニングが望ましい.有酸素運動とは中強度の運動であり,運動中の血圧の上昇が軽度で,血中乳酸の蓄積も認められないため,安全に実施することが可能である.15~60分の有酸素運動を最低週3回(可能なら毎日)行うと,安定した効果が得られる.1 運動負荷試験運動療法施行前に運動負荷試験を行うことは,心拍数コントロールの状況や運動耐容能の評価,および運動強度を設定するのに有用である.心拍数コントロール不良や中止基準を満たす心室性不整脈が出現した場合は,運動療法導入前に,内服による脈拍の再調整や心室性不整脈の原因精査や加療が必要となる.ただし,慢性心房細動に対する安静時および運動時の至適脈拍数は明らかにされておらず,米国心臓病学会/米国心臓協会(American College ofCardiology Foundation/American Heart Association:ACCF/AHA)のガイドラインでは,エビデンスからではなく経験則より脈拍は安静で60~80bpmで,中強度の運動下では90~115bpmが推奨されている23).ただし,RACEⅡ研究では,614人の慢性心房細動患者に対して心拍数を厳格コントロール群(安静時80bpm未満と中強度運動時110bpm未満)と緩徐コントロール群(安静時110bpm未満)に割り振り,複合心血管イベントについて検討したが,両群の発症率に有意差は認めず,心不全による入院も有意差を認めなかった24),25).またJaberらの報告でも,85人の慢性心房細動患者を対象にしているが,心拍応答が正常の群と過剰心拍数応答群とでは運動耐容能に有意差を認めなかった26).以上から,現時点では運動時の至適心拍数は明らかでなく,心拍数コントロールができているかの判断は,個々の患者で判断する必要がある.Van Gelderらの報告より24),運動療法開始前にACCF/AHAのガイドラインでの推奨目標値を達成する患者は少ないと考えられるため,心不全がコントロールできていて,安静時心拍数110bpm未満であれば運動負荷試験を行い,運動負荷時の心拍数上昇の程度,自覚症状,運動時間,ピークの代謝当量(METs数)等で,運動療法が導入可能か判断する.2 運動処方通常,運動処方は,①運動の種類,②運動強度,③運動の継続時間,④運動の頻度,から構成される.運動強度の設定は,呼気ガス併用心肺運動負荷試験施行例であれば,通常の洞調律症例と同様に,有酸素運動の上限である嫌気性代謝閾値(anaerobicthreshold:AT)での負荷量や,METs数から歩行速度を算定して運動処方を行う.また,トレッドミル検査では,中強度負荷の場合は最大運動負荷でのMETs数の40~60%から,また軽強度負荷ならMETs数の20~40%から歩行速度を算出して運動処方を行う.運動負荷が困難な場合は,Borg指数などの自覚的運動強度を用いて運動処方を行う.心機能の低下がない症例では,中強度負荷の運動強度より開始する.ただし心房細動患者の場合,中強度負荷ではATレベルに達していない可能性もあるため,運動療法導入後に血圧,心拍数,自覚症状をみて,負荷不十分と判断した場合は,高強度負荷への変更を考慮する(図)1).また,心機能低下症例では,臨床所見や運動負荷試験に基づいて医師が決定した運動処方に従って個別に運動メニューを作成したうえで慎重に実施する.原則として,心電図モニターを用いた監視下運動療法から開始されるべきであり,過負荷になっていないか,心不全が増悪しないかを監視する必要がある.ペースメーカ,植込み型除細動器(implantablecardioverter defibrillator:ICD)を植え込み症例では,ペースメーカモード,心拍応答機能,オートモードスイッチ,ICD作動の心拍数の下限などについて運動負荷,運動療法前に確認しておく.さらに,発作性心房細動出現にて,ICDの誤作動や心拍応答機能の不具合が出現しないか注意を払う必要がある.また,心房細動患者の運動負荷に対する脈拍の反応は,患者ごとに大きく異なり,同一患者でもそのときの体調により心拍数の反応が異なる場合もあるため,心拍数による運動強度設定は困難と考えられる.しかしながら,実際には運動負荷試験時の心拍数を参考にし,心拍数の設定も幅をもたせて行う.3 運動療法開始後の注意点安静時心拍数が110bpmを超えていれば,その日の運動療法は中止するか,運動強度や運動時間を軽