カレントテラピー 33-3 サンプル page 19/36
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カレントテラピー 33-3 サンプル
Current Therapy 2015 Vol.33 No.3 69287Ⅰ はじめに心房細動は,加齢とともに有病率が高くなるため,高齢化社会により心房細動患者は今後もますます増加していくことが予想され,診療する機会も増加している.運動療法には表 1)に示すようなさまざまな身体的効果が示されている.運動耐容能および筋力を増加させ,生活の質(QOL)を改善し,交感神経の緊張を低下させる.また,高血圧,脂質異常症,2型糖尿病など冠危険因子に対する有益な効果も証明されており,生命予後の改善や冠動脈事故発生率を減少させる効果も認める.日本循環器学会の『心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2012年改訂版)』1)を基に,最近の知見を交えて,心房細動と運動および運動療法の関係について述べたい.Ⅱ 心房細動の新規発症と運動との関係心房細動の新規発症には,日常生活の活動度や日常の運動強度と関係あるとする報告と関係ないとする報告があり,controversialである2)~9).Mozaffarianらは,65歳以上の5,446人を対象に身体活動量と新規心房細動発症との関係についての前向き登録研究を実施し,10年間の観察期間において,1,061人に新規の心房細動を認め,身体活動レベルが高いほど心房細動発症リスクが有意に低下することを示した2).一方,運動強度に関しては,中強度の運動では心房細動発症リスクを有意に低下させるが,低強度と高強度では低下させなかった.また,Aizerらが実施した,高強度の運動を行っている40~84歳の健康男性16,921人を対象に高強度運動と心房細動発症の関係について検討した前向き登録研究では,12年間の観察期間で1,662人が心房細動発症を認め,50歳以下では高強度運動が心房細動発症リスクを有意に上昇させた3).50歳以上に関しては,高強* 杏林大学医学部循環器内科助教心房細動の診断と治療の最近の動向―進むべきか,退くべきか心房細動に対する運動療法合田あゆみ*生活習慣に関連した疾患の増加や高齢化社会の進行によって,心房細動は増加傾向にある.また運動療法は心疾患患者において,さまざまな身体的改善,生命予後改善に効果があることが示されており,薬物療法と同等の効果があることがわかっている.心房細動患者に対する運動療法は,新規発症の予防効果,運動耐容能改善,および生活の質(QOL)改善が認められており,特に冠危険因子を合併している患者には,積極的に運動療法を勧めるべきであると考える.運動療法は,中強度の有酸素運動で行うのが安全かつ効果的であり,脈拍の変動や自覚症状に注意し進めていく.