カレントテラピー 33-3 サンプル

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Current Therapy 2015 Vol.33 No.3 31249Ⅰ はじめに非弁膜症性心房細動(non-valvular atrial fibrillation:NVAF)に伴う脳梗塞の多くは心原性脳塞栓症であり,再発予防に抗凝固療法が必須である.従来のヘパリンやワルファリンによる抗凝固療法に加えて,新規経口抗凝固薬もしくは非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(novel oral anticoagulants, or nonVKA oral anticoagulants:NOAC)が臨床応用されている.本稿ではNOACとワルファリンの比較,日本循環器学会のガイドラインに従った抗凝固療法の実際,および各NOACの使い分けを概説する.Ⅱ ワルファリンかNOACか?NOACはワルファリンに対して管理が容易である.食事の影響を全く受けず,薬物の影響は最小限であり,内服後の効果発現までの時間は短く,半減期も短いため周術期管理が容易で,モニタリングが不要な抗凝固薬として開発されている1).さらに第Ⅲ相試験でNOACはワルファリンと比較して脳梗塞予防効果は同等かそれ以上,大出血発現率は同等かそれ以下,頭蓋内出血は大幅に低下することが示された(図1~3)1).このようにNOACはワルファリンに対して優越性を有しており,同等の適応があればワルファリンよりもNOACを考慮すべきである.NOAC第Ⅲ相試験をアジア人や東アジア人とそれら以外で比較した研究は,アジア人や東アジア人は小柄でクレアチニンクリアランス(CCr)が低く,*1 国立病院機構九州医療センター脳血管センター脳血管・神経内科*2 国立病院機構九州医療センター脳血管センター脳血管・神経内科科長心房細動の診断と治療の最近の動向―進むべきか,退くべきか抗凝固療法の選択法松岡幹晃*1・矢坂正弘*2非弁膜症性心房細動における脳梗塞予防を目的とした抗凝固療法は,日本循環器学会の『心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂版)』に沿って,脳梗塞のリスク評価を行い,抗凝固療法の適否を判断する.さらに新規経口抗凝固薬(NOAC)のワルファリンに対する優越性を考慮して,同等の推奨グレードであれば,まずNOACを考慮する.ダビガトラン,リバーロキサバン,アピキサバンおよびエドキサバンの4種のNOACはいずれも優れた資質を有しているが,ワルファリンを含めて,各抗凝固薬の虚血性脳卒中予防効果,大出血抑制効果,頭蓋内出血抑制効果,利便性,腎障害や肝障害,薬価,他の血栓塞栓症の治療などを考慮に入れて適切な抗凝固薬を選択する.大出血や頭蓋内出血といった出血性合併症を回避する観点から,それらのリスクである,高血圧,高血糖,過度の飲酒,喫煙,抗血栓薬の併用へ十分な注意を払う.