カレントテラピー 33-2 サンプル

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Current Therapy 2015 Vol.33 No.2 79在宅医療教育の最前線171Ⅸ 大学-地域間連携をとおして在宅医療の学問体系化へ大学(アカデミア)の最大なる使命は,臨床を背景とした「教育と研究」である.全国の大学・医育機関において,より地域医療に関する実習を取り入れようという動きになりつつある.そこには,在宅医療がしっかりとした「学問体系化」に向けて発展していく必要があり,今まで以上に教育体制のウェイトを変えることも求められる.そのためには在宅医療を中心に見据えた「臨床研究」の体制も必然的に必要となってくる.治療という観点を主眼とする臓器別の病院医療中心の研究とは別に,生活の質という観点を主眼とする在宅医療の臨床研究を進めるためには,診療所中心で行われている在宅医療の症例を広く集積し,QOLの確保という観点に立って分析し,質の高いエビデンスを構築することが必要である.また,在宅医療を円滑に進めるためのさまざまな機器や情報共有システム(information andcommunication technology:ICT)などの開発も並行して求められる.さらには,老年医学中心に取り組まれてきた高齢者総合機能評価(comprehensivegeriatric assessment:CGA)の概念を在宅医療の分野にも拡充し,高齢者に対する一貫した総合的な評価に基づく医療を展開する必要がある.そのためには高いリサーチマインドをもった研究者の養成も不可欠である.そこには医育機関における大学院教育なども含め,幅広い層を対象とした研究・教育も必要があることは間違いない.それを現実化していくためには,医育機関である大学がしっかりとした地域医療の現場と二人三脚を組む必要があり,臨床・教育・研究の3分野にわたる真の「大学-地域間連携」が求められる.Ⅹ おわりに以上,東京大学医学部が取り組み始めた在宅医療を中心とする地域医療学実習を概説した.このような取り組みにより,高度先端医療から在宅医療までのさまざまな医療のステージ・形態(医療の全体像)を学生に体験させ,考察させることにより,学生が自分自身の目指す医師像をイメージできるようになるであろう.医学教育において,在宅医療を軸とした「地域医療の現場」をより早期から有効的に教育に組み込むべきであり,医学生のminimum requirementとしての知識を植え付けることにつながる.「患者である前に,少しでも長く生活者であり続けるために」という基本概念の下,バランスの取れた医学教育システムを構築し,本学としても「より早期から,もっと現場を」という新たな医学教育改革に臨みたい.近い将来,医学部をもつすべての大学(医育機関)が在宅医療・地域医療の現場を卒前教育に積極的に取り入れ,より早期から視野の広い医療者を養成することが望まれる.