カレントテラピー 33-2 サンプル page 19/34
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カレントテラピー 33-2 サンプル
74 Current Therapy 2015 Vol.33 No.2166しては,高度先進医療の急速な進歩という象徴的な時代背景が根底にあり,そのうえで医学教育においても,その高度先進医療を背景とした「治療学」に非常に大きな重点を置いた現実がある.すなわち,やや大げさに言い換えれば,現在の医学教育のゆがみの部分とも言えるのかもしれない.そして,この医療教育のゆがみは研修医制度の変革と相まって,医学部生および研修医の都市型医療志向を生み出し,それが若手医師の都市集中と偏在化,その結果としての地域医療の崩壊にも大きくつながっている.Ⅲ 地域で求められる医師:そのための育成とは今後,わが国においてかかりつけ医機能も含めた総合診療が各地域で展開され,住民の一番近いところで心身の健康を下支えできる若手医療人が強く求められる.彼らを育成していくなかで,特に自らの医療現場で生じた問題を解決していく能力を備える必要がある.地域医療で生じる問題は,医育機関である大学や医療センターなどの高次機能病院で発生する問題とは大きく異なる.いわゆるゲートキーパー役を求められているのだが,はたしてどのような機能までカバーしなければならないのか.具体的には生活習慣病の診断と厳格な管理,在宅医療を軸とした地域医療とチームビルディング,患者および家族(介護者含む)に対する関係構築と身近なサポート,一次予防や健康増進など,高次機能病院において扱う諸問題以上に多岐にわたる課題と直面することになる.また,地域医療における日々の診療で生じた疑問から湧いて出てくるリサーチクエスチョンに対して,臨床研究という形で積極的に関わって欲しい.そのためには,医学早期教育のなかで学生にいかに現場を通じながら,より多面的な経験を受けさせることが重要であろうと思われる.全国の大学を比較しても,当然ながら地域差は非常に大きい.地域医療が相当大きなウェイトを占め,若手医療人には積極的に地域医療に携わってもらう必要がある地方圏の大学と,一方では,さまざまな資源が豊富な大都市圏における大学もある.また,地域差に加えて,医療機能の「機能分化」の問題は,今後の高齢社会を見据えて,改めて日本全体で考え直す必要がある.Ⅳ 『生活臨床』という志を早期から前述したように,医学早期教育において高度先進医療を背景とした治療学に大きな重点を置いた現実がある.そこで,「医の原点」から考え直す時期にきていると言っても過言ではない.まず今後のわが国を考えると,寿命がどんどん延びていくなかで,健康寿命の延伸を獲得できるかが鍵となる.言い換えれば,要介護高齢者の激増も予想されているからこそ,今改めて「病人である前に『生活者』なのである」という概念の下,従来の「治す医療」から『治し支える医療』へと舵を切り直す必要があり,その概念をより早期の学年のうちから植え付けることが求められる.また,われわれは普段からの臨床業務がより生活の場に近くあるべきという,『生活臨床』という志を,すべての臨床活動を行っている全専門職(特に急性期病院で勤務している若手医師も含め)がもち続ける必要がある.その結果,必然的に高齢期における「生活の質(QOL)」の重要性を再考することになるのであろう.Ⅴ 在宅医療の位置づけを新たに国民側も専門職側も全員において在宅医療の位置づけを新たにすることが求められる.具体的に述べれば,在宅医療の適応や導入のキッカケとして,単に急性期病院の病床がパンクしてしまうからという理由ではなく,また長期の入院になってしまったからでもなく,さらには患者が通院困難になったから在宅療養を導入するなどの理由はごく一部分であり,むしろ積極的に在宅療養の「優位性」を全国民で考えていくことが必要である.そこには当然ながら,医学早期教育にも積極的に取り入れることも求められる.