カレントテラピー 33-2 サンプル page 13/34
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カレントテラピー 33-2 サンプル
44 Current Therapy 2015 Vol.33 No.2136者間のコミュニケーションの改善であったと指摘.そして,この研究の限界のひとつに,がん以外の患者を含めていないことを挙げている.この知見が示すことは,緩和ケアに関する教育機会を増やし,緩和ケアの専門家を増やすことで,そこにアクセスしやすい環境をつくること.そして,ネットワーキングを構築するなかで顔の見える関係を構築していくことであり,その結果,在宅緩和ケアを含めた地域緩和ケアが推進されることを意味する.また,個別のレベルの問題として,地域緩和ケアがどうして改善しない場合があるのかについて,特に,在宅看取りを達成できなかった理由として,症状緩和,急変への対応,在宅医へのアクセス情報の不足等を挙げている.このように,OPTIMプロジェクトは在宅緩和ケアの課題と展望に示唆を与えてくれている1),2).Ⅲ EOLケアチームを通じてみえる在宅緩和ケアの課題と展望日本では,少なくとも制度上は,がんを中心に緩和ケアが発展してきた経緯がある.在宅緩和ケアの課題と展望を述べるにあたり,疾患を限定しない病院の緩和ケアチームである,EOLケアチームの経験について触れたい.筆者らは,2011年10月1日から3年以上にわたって,EOLケアチームを稼働させている.このチームは,従来のがんを対象にした緩和ケアチームの機能に,非がん・高齢者疾患を主な対象に加え,かつ,疾患のみならず認知症やフレイルといった高齢者の精神的・身体的自律を脅かす状態も対象にしている.500例を超える依頼件数のなかで,約40%が非がん疾患であるというのは,全国でも珍しく,緩和ケアに非がん・高齢者疾患のニーズがあることを明らかにしたと言える(図2).また,この試みは以下のように在宅緩和ケアの推進に繋がる.苦痛症状緩和と意思決定支援をキーワードにし,さらに論を進めたい.1 苦痛症状緩和について身体的苦痛の緩和や,精神的苦痛の緩和は非がん・高齢者疾患においても残された解決されない課題であるが,がん患者のほうが,より支援のニーズが高かった.前者については,非がん性呼吸困難をきたす患者に対するモルヒネの使用が保険適応上制限されており,日本人のエビデンスが不足している現状もあることから,在宅緩和ケアに寄与するような連携ができなかったことが挙げられる.入院中に人生の最終段階にあるような慢性呼吸器疾患患者や慢性心不全患者の呼吸困難に対してモルヒネを使用しても,その後に連携する在宅医がモルヒネを使用できない環境にあるか,または使用できる環境にあったとしても保険適応やエビデンスの乏しい状況下でモルヒネを使用することに躊躇したために在宅復帰が困難になった事例を経験した.筆者らは,全国の病院とともに非がん性呼吸困難に対するモルヒネの有用性を明らかにすべく臨床研究を推進している.特に,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonarydisease:COPD)については,国立病院機構近畿中央胸部疾患センターの松田能宣医師を中心に,日本がん研究治療機構等の支援を受け,施設での倫理委員会の承認を得て,多施設共同臨床研究が開始されている.ここでのエビデンスを基に,疾患ガイドラインへの掲載を経て,特に在宅緩和ケアの場で,非がん性呼吸困難に対するモルヒネの使用を促進し,公知申請等の手段を経て保険適応の獲得を目指している.(%)自宅死亡率6.76.88.69.610.57.3 7.4 7.712108642007 2008 2009p<0.0012010(年)介入地域合計全国平均図1 全国平均と比較した地域介入後の在宅死亡率〔参考文献1)より引用〕