カレントテラピー 33-2 サンプル

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Current Therapy 2015 Vol.33 No.2 43135Ⅰ はじめに高齢化率は25%を超え,悪性腫瘍,認知症やフレイル(虚弱)などを併せ持ち,臓器不全を合併しやすい高齢者の数は増加の一途をたどっている.その結果,多死時代に直面し,在宅緩和ケアの重要性はますます高くなってきている.すなわち治し支える医療としての在宅緩和ケアが求められている.また,在宅緩和ケアの現場では,疾患を限定しない緩和ケアや,苦痛症状の緩和,エンドオブライフの意思決定支援の取り組みが重要であることは,論をまたない.本稿では,世界規模の緩和ケアの地域介入研究であるOutreach Palliative care Trial of Integratedregional Mode(l OPTIM)プロジェクトの知見の一部,非がん性呼吸困難に対するモルヒネの有用性を明らかにするだろう多施設共同研究,国立長寿医療研究センターEOLケアチームでの経験,平成26年度「人生の最終段階における医療体制整備事業」の事務局としての経験に触れながら,在宅緩和ケアの課題と展望について述べてみたい.Ⅱ OPTIMプロジェクトから見えてくる在宅緩和ケアの現状と課題在宅緩和ケアを語るうえで,世界でも注目されている緩和ケアの大規模地域介入研究であるOPTIMプロジェクトは注目に値する.Moritaらは,『LansetOncology』のなかで,教育,専門家のサポート,ネットワーキング等の介入で,在宅看取り率(図1)や緩和ケアの質が改善し,その最も重要な要因は医療*1 独立行政法人国立長寿医療研究センター緩和ケア診療部/EOLケアチーム*2 独立行政法人国立長寿医療研究センター看護部/EOLケアチーム*3 独立行政法人国立長寿医療研究センター薬剤部/EOLケアチーム*4 独立行政法人国立長寿医療研究センター在宅連携医療部治し支える医療としての在宅医療の現状と展望在宅緩和ケアの課題と展望西川満則*1・高梨早苗*2・久保川直美*3・三浦久幸*4高齢化率は25%を超え,多死時代に直面し,在宅緩和ケアの重要性がますます高まってきている.世界的な緩和ケアの地域介入研究であるOutreach Palliative care Trial of Integrated regionalModel(OPTIM)プロジェクトでは,在宅看取り率の改善や緩和ケアの質の向上を達成したが,がん以外を対象としていなかったことや,症状緩和,急変時などにおける難しい意思決定支援,在宅医へのアクセス情報の不足等は個別の問題として残っており,今後の課題が示されている.①緩和ケアチームが,非がん・高齢者疾患も対象にできるようになり,②非がん性呼吸困難に対するモルヒネの有効性を示すエビデンスと保険適応が獲得され,③難しい医療選択において,「相談員」が,在宅緩和ケアを質の面から支え,④高度な一体感とチーム連携を特徴とした在宅緩和ケアの拠点が活躍できることで,在宅緩和ケアが,より一層,推進されるのではないかと思われる.