カレントテラピー 33-12 サンプル

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Current Therapy 2015 Vol.33 No.12 791221Ⅰ はじめに哺乳類は,一生の間に打つ心拍数が決まっており,心拍が速い動物ほど寿命が短いという仮説がある.心拍数と寿命には負の関連があるが(図1),ヒトだけがこの直線から大きく外れているようである1).しかし,疾患の治療や予防が確立していなかった時代のヒトの自然寿命は,30年未満だったと考えられており,ヒトも例外ではないと考える研究者も多い.これまで,多くのヒト疫学研究において,心拍数と心臓突然死や心血管イベントとの関連が報告されており,安静時の心拍数が上がるにつれて死亡リスクは増える2).しかし,心拍数のみが寿命を規定しているわけではない.心不全患者では増悪期に頻脈性不整脈を合併することが多く,急性期治療においてレートコントロール目的にランジオロールが考慮される.また,慢性心不全治療においては,β遮断薬の導入・漸増が推奨されるが,心拍数の増加が予後と相関することや,β遮断薬の使用量が心拍数低下と相関することが示されており,特異的に心拍数のみを下げる薬剤の開発がもたれた.そのようななかで,心拍数を特異的に下げる薬剤として登場したのが,ivabradineである.欧州ではすでに心不全診療ガイドラインにも掲載され,標準治療薬のひとつとなっているが,本邦での保険適用はない.現在,第Ⅱ相臨床試験まで治験が進められている.Ⅱ 心拍数を低下させる薬剤1 Ivabradine1)薬理学的特徴一般に,心拍数は洞結節の自発的な興奮によって規定される.洞結節の活動電位形成に重要な役割をIvabradineとランジオロール─ 心拍数からみた心不全治療─奥村貴裕** 名古屋大学医学部附属病院循環器内科病院助教慢性心不全の診断と治療─ 最近の動向健常者のみならず,虚血性心疾患あるいは心不全患者など,さまざまな母集団において,心拍数が死亡率と関連することが報告されている.心不全は高率に心房細動を合併し,増悪期に頻脈性不整脈を呈することが多い.急性期の心拍数管理においては,従来ジギタリスが用いられてきた.近年,静注薬である短時間作用型β1遮断薬ランジオロールの安全性・有用性が報告されたことから,心機能の低下した心不全患者の心拍数コントロールに用いられるようになった.一方欧州では,洞結節に直接作用し心拍数を低下する薬剤ivabradineが臨床応用され,慢性期の心不全標準治療への追加投与が予後を改善させ得る報告が相次いでいる.本稿では,ivabradine およびランジオロールの薬理学的特徴と臨床試験の成績を中心に解説し,心不全治療への応用について解説する.a b s t r a c t