カレントテラピー 33-11 サンプル

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カレントテラピー 33-11 サンプル

10 Current Therapy 2015 Vol.33 No.111060の発現解析の利用が考えられるのは予後予測因子として用いる場合だろう.つまり,miRNAの発現異常をとらえられる場面が限られていることが問題に挙げられている.しかし,この障壁を乗り越える発見があった.その発見とは,miRNAが血清などの体液中に比較的,安定的に存在するという事実であり,低侵襲的診断マーカーとしての有用性を高めることとなった12).一言に“miRNAが体液中に存在する”と言っても,RNaseが存在する体液中で,どのようにして安定に存在することができるのか疑問に思うかもしれない.miRNAに限らず,核酸という括りであれば,すでに1948年には血清,血漿中に核酸が存在することが報告されており13),それからおよそ30年後には,健常人と比較して,がん患者の血清中には細胞外DNAが多く含まれていることや予後不良の患者血清にはさらに多く含まれている傾向が示された14).また,血液中に存在するRNaseによって分解されると考えられていたRNAの存在も示唆され,1999年に悪性メラノーマの患者由来の血清からメラノーマ,メラノサイト特異的に発現するチロシナーゼのmRNAをRT-PCR法によって6例中4例の血清検体で検出したが,健常人由来の血清からは検出されなかったという報告がある15).この報告では,血清を遠心分離した後に,0.45μmのフィルターに通し,細胞および細胞破片を除いてからRNA抽出を行っているため,どのような状態で存在しているのかはわからない,という結論であったものの,タンパク質や脂質と結合しているのではないかという予想をしている.実は,この予想は正しく,その後,アポトーシス小体やエクソソームといった小胞に内包されていることが報告されている12),16),17).そして,miRNAもエクソソームに内包されていることが,2007年に報告された12).現在では,miRNAの体液中での存在様式は複数報告されており,下記にまとめた.体液中に存在するmiRNAは細かく分類すると,図のように,a)脂質やタンパク質に結合しているmiRNA, b)エクソソームに含まれるmiRNA,c)アポトーシス小体に含まれるmiRNA,d)細胞から漏出したmiRNAに分けることができる.順に説明すると,a)については,Ago2やNPM1,HDL(リポタンパク質)などのタンパク質に結合して体液中に存ゲノムDNAAAAmiRNAb)エクソソームに含まれるmiRNAa)タンパク質や脂質に結合しているmiRNA細胞内物理的刺激など細胞死もしくは破損した細胞d)細胞から  漏出したmiRNAc)アポトーシス小体に  含まれるmiRNAAgo2やNPM1,リポタンパク質など血液や尿などの体液中を循環している遺伝子の発現調節エクソソームなどの細胞外小胞図 Circulating miRNAの存在様式