カレントテラピー 33-11 サンプル

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Current Therapy 2015 Vol.33 No.11 71057がん診断と治療の最近の動向― 個別化医療の発展―近年の分子生物学,病態生物学,免疫学,情報科学等の進歩により,がんの診断・治療は,その発生臓器と組織型に基づくスタイルから,遺伝子解析結果に基づいて,それぞれの患者に最も適した診断・治療を実施するスタイル(個別化医療,テーラーメード医療)に変貌を遂げつつある.かつては外科治療以外の治療選択肢が非常に少なかった悪性黒色腫や甲状腺癌に対する免疫チェックポイント阻害剤や分子標的薬の開発と臨床導入が,その端的な例といえる.本特集では「がん診断と治療の最近の動向─個別化医療の発展─」のタイトルの下,まず,当該領域をリードされる14名の専門家の方々に,各種がんを巡るこれら個別化医療の最新の診断手法と治療法について解説をいただいている.診断分野では,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の大型プロジェクト「体液中マイクロRNA測定技術基盤開発」の研究開発責任者である国立がん研究センター研究所の落谷孝広分野長による未来型がん早期診断法の解説に始まり,がん遺伝子診断,PETを用いた分子イメージング手法を用いたがんの存在・機能診断,病理学的診断の最新動向を知ることができる.また,治療分野においては,分子標的薬を用いるがん薬物療法に加え,強度変調放射線治療(IMRT)や定位放射線照射といった高精度放射線治療の最新動向を広島大学放射線治療科の永田靖教授に,腹腔鏡下手術やロボット手術の最新動向については藤田保健衛生大学上部消化管外科の宇山一朗教授に解説いただけるなど,読みごたえのある内容になっている.そして最後の座談会においては,国民皆保険という世界に冠たるすばらしい医療システムを有するわが国で,ロボット手術を代表とする先進医療技術やゲノム医療をいかに実現していけば良いかについて,外科系学会社会保険委員会連合(外保連)の前会長で,先進医療技術の保険導入に関しての論客であられるがん研究会有明病院の山口俊晴院長と日本乳癌学会理事長,日本HBOC(hereditary breast and ovarian cancer;遺伝性乳がん・卵巣がん症候群)コンソーシアム理事長として,ゲノム医療のわが国での臨床導入に尽力されている昭和大学乳腺外科の中村清吾教授をお迎えしてお話を伺えたことは,平成28年度診療報酬改訂を控えたこの時期,時宜を得たものである.本号を通読することで,国民皆保険下におけるわが国独自の未来型医療のあり方について,読者各位に考えていただければ幸いである.エディトリアル企画国立がん研究センター企画戦略局長/中央病院副院長(研究担当)藤原康弘