カレントテラピー 33-11 サンプル

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74 Current Therapy 2015 Vol.33 No.111124進行膵臓癌に対する新しい標準治療─FOLFIRINOX, GEM+nab-PTXなど─切除不能膵癌に対する化学療法杏林大学医学部内科学腫瘍内科教授 古瀬純司1 切除不能膵癌に対する化学療法の概要切除不能膵癌に対する化学療法は,これまでの第Ⅲ相試験の結果からゲムシタビン(GEM)単独治療に加え,GEM+エルロチニブ併用療法とS - 1単独治療が膵癌診療ガイドライン2013年版で推奨されていた.海外から,2010年にフルオロウラシル/ホリナートカルシウム/イリノテカン/オキサリプラチン併用療法(FOLFIRINOX),2013年にGEM+ナブパクリタキセル(nab-PTX)併用療法が相次いでGEM単独を超える治療として報告された.わが国でもそれぞれ臨床試験が行われ,適応が承認されている.それを受けて,2015年,膵癌診療ガイドラインが改訂され,遠隔転移を有する膵癌に対してFOLFIRINOXとGEM+nab -PTXが第一選択として推奨されている.2 FOLFIRINOX2010年,フランスにおいて転移を有する膵癌患者を対象に行われたFOLFIRINOXとGEM単独との第Ⅲ相試験(ACCORD11試験)の結果,FOLFIRINOX群で有意に良好な成績が報告された.GEMに対するハザード比が0.57(95%信頼区間:0.45~0.73)と大きな差がついており,これまで報告された治療では最も効果の高い治療法である.わが国で行われた第Ⅱ相試験においても奏効割合39%,全生存期間中央値10.7カ月とほぼ同様の治療成績が報告されている.FOLFIRINOX療法は毒性も強く,特に高度の骨髄抑制を認め,わが国で実施された第Ⅱ相試験では発熱性好中球減少が約22%に発現している.その他,末梢神経障害,嘔吐,下痢,疲労感などの非血液毒性もGEM単独に比べ有意に多く発現している.これらから,FOLFIRINOXの適正使用の対象は,65歳以下の非高齢者,全身状態が良好,減黄が十分,感染症のリスクがない,などの条件が設定されており,適切な患者選択と副作用管理が重要となる.また,高用量のイリノテカンを用いており,腸管麻痺,腸閉塞のある患者および多量の腹水,胸水のある患者も禁忌となる.イリノテカンの代謝に影響を与えるUGT1A1 遺伝子*6 または*28 のホモ接合体あるいは両方のダブルヘテロ接合体の場合は十分な安全性や適当な用量が確立しておらず,適応を避けるのが妥当と考えられる.3 GEM+nab-PTXnab -PTXはPTXにアルブミンを結合させた130nmのナノ粒子製剤である.従来のPTXと異なり,生理食塩水に懸濁することができるため,前投与が必要ないという利便性がある.またアルブミン結合により組織への移行が高くなることから,有効性の改善も期待される.膵癌では遠隔転移例を対象にGEM+nab -PTXとGEM単独の大規模な第Ⅲ 相試験(MPACT試験)が欧米を中心に行われ,GEM+nab -PTXのGEMに対するハザード比が0.72(95%信頼区間:0.62~0.83)と有意な生存期間の延長が報告された.主な有害事象は骨髄抑制,下痢,末梢神経障害であるが,比較的良好な忍容性が得られている.日本人での安全性と有効性を確認するため,第Ⅰ/Ⅱ相試験が実施され,転移を伴う膵癌患者34例において奏効割合58%,全生存期間中央値13.5カ月と良好な成績が得られている.