カレントテラピー 33-11 サンプル page 18/32
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カレントテラピー 33-11 サンプル
Current Therapy 2015 Vol.33 No.11 41がん治療1091の国内での普及のためには,臨床的エビデンスの確立,マンパワーの充実,十分な品質保証体制の確立,治療装置や設備の充実,国内研修体制の確立等の課題が山積している.2 強度変調回転放射線治療(volumetric modulated arc therapy:VMAT)ガントリ回転中に回転速度,線量率,多分割絞り(Multi-Leaf collimator:MLC)形状を変化させながら照射を行う新しいIMRT技術をVMATと呼ぶ.固定多門で行われるIMRTと比較し,短い照射時間で,ターゲットに限局した放射線治療を行うことができ,モニタユニット値の低減も図ることができるというメリットがある.しかし,線量率変調,ガントリ回転速度変調,複雑なMLC運動という加速器制御の精度管理が困難であること,VMATに特化した新たな検証法の導入を要することなどが問題となり,VMAT導入の障壁となっている.3 臨床応用IMRTの主たる目的は,合併症の低減および局所制御率の向上にある.保険適応の拡大により,IMRTが施行される疾患は多岐にわたるが,本項では代表的な頭頸部癌および前立腺癌について述べる.1)頭頸部癌頭頸部癌はもともと放射線感受性が高く,さらに化学療法の併用により,治療成績が比較的良好な疾患である.一方で,頭頸部領域には重要臓器が数多く存在するため,生存者における晩期有害事象の低減が克服すべき課題であった.例えば,唾液腺照射による唾液分泌低下や,咽頭収縮筋への照射による嚥下機能の低下,中耳・内耳への照射による中耳炎や聴力障害,さらに,眼球近傍の腫瘍では視力障害や白内障などの合併症が問題となっていた.そのため,頭頸部癌は,腫瘍への線量を担保しながら,正常臓器への線量低減が可能なIMRTのよい適応である.唾液腺障害については,通常照射群とIMRT群では,自他覚所見ともに,IMRT群で有意に軽いと報告されている3).また,一回の照射でターゲット内に異なった線量を照射する(simultaneous integral boost:SIB)方法が用いられることもある.これは主腫瘍に2.0Gy/回,予防的リンパ節領域に1.6~1.8Gy/回といったように,異なった線量で照射を行う方法である.図3に通常照射およびVMATの線量分布図を示す.2)前立腺癌前立腺癌は進行が緩徐であり,その治療方針は多岐にわたる.根治的治療としては,手術,小線源治療,外部照射があり,また,高齢者においては,ホルモン療法単独や経過観察などが選択されることもある.しかしながら,従来の3D -CRTでは,隣接する直腸(a)3D-CRT (b)VMAT図3上咽頭癌における3D-CRTとVMATの比較VMATでは,耳下腺(?)や脳幹,脊髄(→)への照射線量を低減することが可能である.