カレントテラピー 33-11 サンプル

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Current Therapy 2015 Vol.33 No.11 37がん診断1087慮したうえで,術後薬物療法の選択が推奨されている.しかしながらこの分類はまだ課題が多く,luminalA-likeとB-likeの確実なより分け,heterogeneousな集団であるTNBCの個別化診療につながる細分類などは特に喫緊の課題である.Ⅳ おわりに2014年の米国NCCNの乳癌診療ガイドラインでは病理診断に関して以下のように記載されている.「乳癌診療においては腫瘍の広がりと生物学的特性についての十分な知識をもつことが中心的な位置を占めている.これらの所見は病期決定,再発リスクの評価,治療に対する反応性予測にかかわる情報を提供する.そしてこれらの所見は切除された癌組織の病理学的な精査を通じて決定され,病理報告書として臨床側に報告される.しかしながら病理報告書の50%は,患者診療に不可欠な所見記載が一部抜けているという調査結果がある.例えば外科切除検体の切除断端や断端陽性の場合の癌が露出している方向の記載,グレードの記載などである」9)実際,近年の病理部門が報告を求められる内容は,これまでに述べてきたようにきわめて多岐にわたっている.病理の現場からはこれらの多彩な指標を検証する煩雑な作業をより簡便化できるアッセイ系を臨床科や企業と共同で開発していくこと,多くの研究成果を再精査して本当に必要な検査のみに収斂していくことなどが望まれている.例えばOncotype DXRなどのmultiparameter molecularmarkersがKi- 67やグレードに勝るluminal B-like型の選別法であるならば,一部の検索をそちらに回していくのも歓迎すべき方向性と考える.新たな研究面の展開においても病理分野でかかわりがあるとみられるものがいくつかある.一つは,腫瘍浸潤リンパ球とprogrammed cell death 1(PD- 1) ,programmed cell death ligand 1(PD-L1)などの新たな治療適応決定のための病理診断や免疫染色である.一般的なアッセイ法が確立されていないが,近々,重要な知見が出てくるものと期待される.免疫や癌- 宿主相互作用は,癌の広がり,生物学的特性とはまた別のジャンルとして展開が期待される.二つ目は,ラジオ波焼灼療法など早期乳癌の非切除治療を目指した臨床試験へのかかわりである.正確な癌の消失あるいは壊死の診断法の確立が重要となる.三つ目は臨床試験付随研究として盛んに行われるようになったバイオマーカー探索への関与である.次世代シークエンスなどの方法によるゲノム,遺伝子発現,もしくはエピゲノム解析などの際,より良質な検体採取,処理,病理標本作製などが信頼度の高いデータ獲得の鍵となる.今後重要になってくるのは,これらの要望に応じた病理部門のマンパワーをいかにして維持していくかであろう.参考文献1)Coates AS, Winer EP, Goldhirsch A, et al:Tailoring therapiesimprovingthe management of early breast cancer:St GallenInternational Expert Consensus on the Primary Therapy ofEarly Breast Cancer 2015. Ann Oncol 26:1533-1546, 20152)Lester SC, Bose S, Chen YY, et al:Protocol for the examinationof specimens from patients with invasive carcinoma ofthe breast, College of American Pathologists, 2013(http://www.cap.org/ShowProperty?nodePath=/UCMCon/Contribution%20Folders/WebContent/pdf/cp -breast -invasive -13protocol-3200.pdf)3)日本乳癌学会編:臨床・病理 乳癌取扱い規約 第17版. 金原出版,東京, 20124)Lyman GH, Temin S, Edge SB, et al;American Society of ClinicalOncology Clinical Practice:Sentinel lymph node biopsy forpatients with early-stage breast cancer:American Society ofClinical Oncology. American Society of Clinical Oncology practiceguideline update. J Clin Oncol 32:1365-1383, 20145)Donker M, van Tienhoven G, Straver ME, et al:Radiotherapyor surgery of the axilla after a positive sentinel node inbreast cancer(EORTC 10981-22023 AMAROS):a randomised,multicentre, open -label, phase 3 non -inferioritytrial. Lancet Oncol 15:1303-1310, 20146)Hammond ME, Hayes DF, Dowsett M, et al:American Societyof Clinical Oncology/College of American Pathologists guidelinerecommendations for immunohistochemical testing of estrogenand progesterone receptors in breast cancer. J Clin Oncol 28:2784-2795, 2010 Erratum in:J Clin Oncol 28:3543, 20107)Wolff AC, Hammond ME, Hicks DG, et al;American Societyof Clinical Oncology, College of American Pathologists:Recommendationsfor human epidermal growth factor receptor 2testing in breast cancer:American Society of Clinical Oncology/College of American Pathologists clinical practice guidelineupdate. J Clin Oncol 31:3997-4013, 20138)Lakhani SR, Ellis IO, Schnitt SJ, et al:WHO Classification ofTumours of the Breast, 4th Edition. International Agency forResearch on Cancer, Lyon, 20129)Gradishar WJ, Anderson BO, Blair SL, et al;National ComprehensiveCancer Network Breast Cancer Panel:Breast cancerversion 3.2014. J Natl Compr Canc Netw 12:542-590, 2014