カレントテラピー 33-11 サンプル page 13/32
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カレントテラピー 33-11 サンプル
36 Current Therapy 2015 Vol.33 No.111086grade 2,8~9点であればgrade 3とする8).わが国で改良,工夫された核グレードでは核多形性,核分裂像の数の2要素を各々1~3点付与し,加算して2~3点であればgrade 1, 4点であればgrade 2, 5~6点であればgrade 3とする3).2012年のWHO分類第4版では,すべての浸潤癌に適用する(微小浸潤癌には適応できない)とされ,Elston & EllisのNottinghamcombined histological gradeを用いるべきである,と記載されている8).組織学的グレードも核グレードも強力な予後因子であることが示されており,グレードは各病期において予後と相関し,ホルモン受容体発現と逆相関,HER 2過剰発現・増幅やKi - 67などと相関する.“サブタイプ”分類においては,Luminal型乳癌をA-likeとB-likeに分類する際にKi- 67の代わりに用いる施設が少なくない.また,HER 2型,TNBCは大部分の例がgrade 3となる.5 組織型組織学的診断は現在,乳癌取扱い規約分類が用いられる3).浸潤癌については浸潤性乳管癌とその他の特殊型に分けられる.浸潤性乳管癌の乳頭腺管癌,充実腺管癌,硬癌への亜分類は,わが国のみで用いられている.特殊型のなかで粘液癌,管状癌,髄様癌は予後良好であること,浸潤性小葉癌は乳房部分切除にて断端が陽性になりやすいことなどは古くから知られている.粘液癌,管状癌,篩状癌(わが国では乳頭腺管癌の一部)はHER2過剰発現,増幅がまずない群としてASCO/CAP HER2ガイドラインに記載されている7).近年はTNBC“サブタイプ”において組織型の違いが術前術後化学療法に対する反応性と関係することが示され,TNBCに含まれるアポクリン癌,間質にリンパ球浸潤を伴う非定形髄様癌は化学療法が奏効する比率が高いのに対し,紡錘細胞癌,骨・軟骨化生を伴う癌,扁平上皮癌などの“化生癌”は化学療法に抵抗性の例が多いことも示されている.今後はこれらの分子基盤の研究により,治療反応性もしくは抵抗性に関連する客観的な分子マーカーが普及してくるものと期待される.6 リンパ管・血管侵襲(lymph-vascular invasion:LVI)リンパ管,血管侵襲も癌の局所再発,予後不良と関連することが古くから知られている.CAPのプロトコールでは,リンパ管と血管との識別は不要とされ,真皮内のLVIが重要で,臨床的な炎症性乳癌と強い相関があることを述べている2).National ComprehensiveCancer Network(NCCN)のガイドラインやSt.GallenのコンセンサスではExtensive LVIの存在は再発ハイリスク因子に記載されているが,Extensiveの定義はなされておらず,LVIの数の意義についてはさまざまな議論がある1),2).実際の測定にあたっては,浸潤癌巣の辺縁の外で判定すること(辺縁の1mm以内に見つかることが最多),LVIを模倣する浸潤癌巣のアーチファクトに注意すること(管腔の内腔を裏打ちする内皮細胞が見えるべき)などに留意する必要があると述べられている.7 病理学的治療効果判定術前薬物療法後の切除標本に対する病期分類としてTNM分類があり,ypT, ypNという表示で示す.元来,浸潤癌であった腫瘍が術前薬物療法後の外科切除標本の組織病理学的検索にて,浸潤癌成分が消失,あるいは癌巣が完全に消失することを病理学的完全奏効(pathological complete response:pCR)と呼び,予後良好の指標として広く認められている.薬物療法前の浸潤癌の正しい診断と,治療後切除標本の詳細な検討が重要である.乳癌取扱い規約に示された治療効果判定法は1970年代の大星・下里分類から改良されてきたもので,grade 0, 1a, 1b, 2a, 2b, 3の6群に分類しており,国内で広く使われている3).治療効果grade 3は浸潤癌の完全な消失を意味し,pCRに相当する.わが国からの成果として,ごくわずかに浸潤癌が残存したgrade 2bも予後良好という結果が臨床試験で出されている.8 サブタイプ分類2年ごとに行われるSt. Gallen国際乳癌会議では,乳癌の術後補助薬物療法決定のための“サブタイプ”分類が提唱される.この分類は研究の進歩や新しい知見に応じて毎回更新されている1).“はじめに”で示したように,ER, PgR, HER2を基軸にし,細胞増殖指標などを加味してLuminal A-like型,luminal B-like型,HER2型,TNBCに大別される.このサブタイプ分類に加えて組織型や腫瘍径,転移の程度などを考