カレントテラピー 33-11 サンプル page 12/32
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カレントテラピー 33-11 サンプル
Current Therapy 2015 Vol.33 No.11 35がん診断1085れ,予後因子として重要なものが多い.これらの指標は術後薬物療法が考慮される浸潤癌(微小浸潤癌を除く)で治療方針の決定の際に用いられる.術前化学療法の組織学的効果判定も予後因子として知られ,薬物療法臨床試験のエンドポイントとしてしばしば用いられている.1 ホルモン受容体(ER, PgR)腫瘍細胞核におけるホルモン受容体(ERおよびPgR)発現は,乳癌細胞の分化の度合いの指標であり,それ自体が予後因子となることは知られている.ホルモン受容体の検査は現在,免疫組織化学法(immunohisto-chemistry:IHC)で行われており,2010年のASCO/CAPガイドラインに沿って行うことが推奨されている6).ERの発現陽性のカットオフ値については,1%, 10%いずれかかの真の意味での決着はついていないが,いくつかの内分泌療法薬の臨床研究の結果を踏まえ,1%以上の腫瘍細胞が陽性なら治療適応ありとする考えが多数派である.わが国では染色強度にかかわらず10%以上の染色を陽性とするJ-scoreを用いている施設や,染色強度と染色細胞比率各々を4段階,6段階に分け,加算して0~8点のスコアをつけるAllred scoreを評価に用いている施設もある.PgR陽性例のほぼ全例がER陽性であるが,近年ではER陽性+HER 2陰性の群のなかでPgR陽性が予後良好因子であることも示されている1).わが国でも同様のデータが示されており,今後活用される可能性がある.2 HER2(c-erbB-2)HER 2検査はヒト化抗HER 2単クローナル抗体トラスツズマブをはじめとする抗HER 2薬の適応決定のための検査法で,IHC法とin situ ハイブリダイゼーション(in situ hybridization:ISH)法がある.2013年にASCO/CAPガイドラインが改定され,2007年に推奨されていた検体の扱い,IHC, ISHでの評価方法,検査アルゴリズムについて変更が加えられた7).IHCではスコア3+が陽性,スコア0~1+が陰性,スコア2+がequivocalであり,2+の時は,ISH法で同一標本を調べるか,あるいはIHC法/ISH法で別の標本を調べるなどして再検査を行う.ISH 法では核20 個を計測し,HER 2 /CEP 17 (またはCEN17 )比と核1個あたりの平均HER2 遺伝子コピー数を計算する.CEP17 もCEN17 も第17染色体セントロメア領域のプローブで,染色体の本数の内部コントロールとなる.HER2 /CEP17 比≧2.0の場合はISH陽性となるが,HER2 /CEP17 <2.0の場合でも,核1個あたり平均HER2 コピー数≧6.0の場合はISH陽性,≧4.0~<6.0の時はequivocal,<4.0の場合は陰性と判断される.equivocalの時は,IHC法または他のISH法で同一標本を調べるか,別の標本をIHC法/ISH法で調べるなどして,再検査を行う.このような改定の背景には,2007年の際には問題となっていた高い偽陽性率が,HER2検査精度標準化への意識向上に伴い低下したこと,偽陰性によって適正なトラスツズマブ治療を受けられないことのデメリットの重大性が認識されたこと,などがあると思われる.3 Ki-67陽性細胞率Ki- 67は細胞周期(G1, S, G2またはM期)に入っている細胞の核に染色される細胞増殖指標のひとつである.Ki - 67陽性細胞率はER陽性乳癌の強力な予後因子であることが示されている.2011年のSt. Gallen国際乳癌会議で“サブタイプ”分類においてホルモン受容体陽性のkuminal型をluminal A-likeとluminalB-likeに細分類するための代理指標のひとつとして用いることが推奨された.さらに,2013年,2015年のSt. Gallen国際乳癌会議報告書でもKi- 67高値あるいはPgR低値が記載されている.2015年版ではluminalA -likeとluminal B -likeの区別にmultiparametermolecular markersを用いるか,あるいはそれが使えない場合はER/PgR, Ki - 67, リンパ節転移個数,浸潤径などで区別すると記載されている1).現在,比較的多くの施設でKi- 67の測定が行われているが,カットオフ値には確固としたコンセンサスは得られておらず,20~30%の間で施設ごとに決められている.4 グレード(異型度)分類光学顕微鏡の観察によって癌細胞の顔つきを評価したもので,組織学的グレードと核グレード分類がある.組織学的グレードは腺管形成,核多形性,核分裂像の数の3つの要素につき各々1~3点を付与し,加算して,3~5点であればgrade 1,6~7点であれば