カレントテラピー 33-10 サンプル

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Current Therapy 2015 Vol.33 No.10 7951パーキンソン病の治療― 変貌する概念と治療戦略―James Parkinsonの『Shaking palsy』が発行されてから間もなく200年となる.内科医である彼は街で出会った人々の正確な記載からこの疾患の臨床概念を提示した.50年後にCharcotにより,固縮の概念が加わるとともに「パーキンソン病(Parkinson’s disease:PD)」の名称が確立し,1960年にわが国の佐野勇およびオーストリアのHornykiewiczらにより黒質線条体ドパミン系の障害によることが明らかになり,PDの概念はほぼ確立した.黒質神経細胞の変性によるドパミン欠乏により振戦,固縮,無動,姿勢調節障害を呈する運動障害疾患がPDである.20世紀はこの運動障害をいかに改善するかがPD治療の主体であった.21世紀に入り,PDは新たな展開を見せている.発症機序については,タンパク質の品質管理の破たんがその根幹と考えられ,家族性パーキンソニズム原因遺伝子の機能解析等から飛躍的に機序解明が進んだ.さらに,2008年に胎児黒質移植後患者剖検脳で移植片よりレビー小体が発見され,疾患の進行に異常蛋白の伝播がかかわる可能性がクローズアップされた.この伝播機序の解明によりPD進行抑制治療が進展することが期待される.一方臨床的には,うつ,便秘等の非運動症状が注目されるようになり,PDは全身疾患であると考えられるようになった.非運動症状は運動症状に先行することも多く,特にREM睡眠行動異常症(RBD)は10年で約80%がPD等のなんらかのsynucleinopathyになることが報告され,先制治療の点からも注目されている.実際,PD発症に先行して大腸や嗅球でのsynuclein凝集沈着も報告されている.治療については,L -dopa神経毒説は否定され,L -dopaの見直しとともに,現在はL -dopa長時間作用薬の開発が進行している.さらに治療開始を遅らせるメリットはなく,早期に治療を開始し機能的により正常な状態にすることがより良い予後に結びつくと考えられるようになった.運動症状がかなり改善した現在,予後決定の最大因子は認知症の合併である.一方で,新たな治療法として,iPS細胞の利用やドパミン合成酵素の遺伝子治療の臨床研究も進んでいる.高齢化に伴い増加するPDは70歳以上では約1%の有病率であり,今後ますます増加が見込まれる.ドパミン欠乏による運動障害疾患と考えられていたPDであるが,その概念は大きく変化し,診断,治療のアプローチも変化してきている.本特集ではこの大きな流れを第一線で活躍している先生方に簡潔にわかりやすく述べていただいた.今後のPD診療の一助となれば幸いである.エディトリアル企画国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター病院神経内科診療部部長村田美穂