カレントテラピー 33-10 サンプル

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82 Current Therapy 2015 Vol.33 No.101026Ⅲ ゾニサミド1 再発見抗てんかん治療薬であるゾニサミドがPDに有効であることが2001年Murataら10)により初めて示された.続いてウェアリングオフを有する進行期PDを対象に小規模な臨床的検討が行われ,ゾニサミド50 mgから200mgを従前薬に追加投与したところ,オフ時の運動症状,オフ時間などの改善が認められた.2 作用機序ゾニサミドはドパミン系神経伝達に加え,非ドパミン系神経伝達や神経保護作用の報告があり,いわゆる多機能PD治療薬と称されることがある.ドパミン系へ寄与する作用機序としては,線条体のドパミン放出増加11),チロシン水酸化酵素活性の増加作用12),モノアミン酸化酵素B阻害作用13),などが報告されている.非ドパミン系には,T型Caチャネル阻害作用による非特異的振戦抑制作用14)とδ1受容体アゴニスト作用15)が報告されており,後者は大脳基底核回路の間接路に働いて抗PD作用を発現する.ドパミン神経保護作用に関する検討も行われており,星状グリア細胞を介した線条体のグルタチオン増加16)などが報告されている.3 臨床試験ゾニサミドの抗PD作用は2007年に報告された後期第Ⅱ相/第Ⅲ相試験17)により確立された.2週間のプラセボオープン期間の後,プラセボおよびゾニサミド25,50,100 mgを追加投与した4群間で12週間後の運動症状とオフ時間を比較検討したところ,ゾニサミド25および50mg群でUPDRS partⅢの有意な改善が認められ,オフ時間はゾニサミド50および100 mg群で有意な減少を認めた.しかし,より小規模に行われた第Ⅲ相試験ではUPDRS partⅢで50mg群には有意差が認められず,国内承認用量は25 mgのみとなった18).ウェアリングオフに対する効果を検証するために追加第Ⅲ相試験が行われ,50 mg群でオフ時間の有意な短縮が認められた(図3).4 臨床用法ゾニサミドは承認用法用量上,レボドパ製剤に他の抗PD薬を使用しても十分に効果が得られなかった場合に成人には1日1回25mgを経口投与し,ウェアリングオフ改善を目的とする場合には1日1回50 mgを経口投与できる.しかし,オン時の運動機能改善を目的とした場合には50mgは25mgを上回る効果は得られない.『パーキンソン病治療ガイドライン2011』ではゾニサミドを進行期PDの治療薬として他のいくつかの薬剤と並列で推奨している.われわれは早期PDを対象にゾニサミドの運動症状に対する臨床効果を検討し,運動症状の有意な改善を認め(図4),早期PD治療にも有効である可能性を報告した19).Ⅳ おわりに─非ドパミン系治療薬への期待イストラデフィリンはドパミン系神経伝達を直接介さない作用機序から,ドパミン補充療法の最大の欠点である運動合併症に対する予防の可能性やドパミン補充療法が無効な臨床症状,すなわち非運動症状の改善作用などが期待される.また,ゾニサミドはドパミン系神経伝達を介した抗PD作用のほかにも多彩な作用機序が知られる多機能治療薬であり,より早期からの適用でPDの予後をも修飾する可能性も期待される.進行期の運動合併症発現をより遅らせオフ時間変化量プラセボゾニサミド25mg0-0.5-150mg-0.011p=0.085-0.436-0.719p=0.005(hr)図3 プラセボおよびゾニサミド各投与量群におけるオフ時間の変化量(追加第Ⅲ相試験結果より作図)