カレントテラピー 33-10 サンプル

カレントテラピー 33-10 サンプル page 23/32

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 33-10 サンプル の電子ブックに掲載されている23ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
カレントテラピー 33-10 サンプル

80 Current Therapy 2015 Vol.33 No.101024Ⅰ はじめにパーキンソン病(Parkinson’s disease:PD)治療の中心は現在もなお薬物療法であり,治療エビデンスはドパミン補充療法1)の歴史そのものといっても過言ではない.ところがここ数年の間にドパミン系神経伝達を直接介することなく大脳基底核回路からの出力を調節し,抗PD作用を示す薬剤の開発が本邦を中心に行われてきた.Ⅱ イストラデフィリン1 作用機序アデノシン受容体には4つのサブタイプが存在し,A2A受容体は線条体,淡蒼球などに分布し運動障害に関与する2)~5).イストラデフィリンはアデノシンA2A受容体に対し高い親和性を示し,他の受容体サブタイプや他の神経伝達物質の受容体にはほとんど親和性を示さない.PDの大脳基底核回路では線条体ドパミン放出が減少しているため,間接路ではGABAニューロンの活動が亢進している.GABAによる過剰な抑制により淡蒼球外節の活動は低下し,最終的には運動機能障害をきたす.アデノシンA2A受容体は大脳基底核回路の中でも線条体に入力するGABA神経終末と,線条体から淡蒼球外節に入力するGABA神経終末において局在が知られている5),6).イストラデフィリンはこれらに結合し,GABA放出を低下させることにより抗PD作用を発現する(図1).2 臨床試験イストラデフィリンの抗PD作用は前期第Ⅱ相試験により示された(インタビューフォーム参照).レボ非ドパミン系薬剤─わが国発の抗PD薬, istradefyline, zonisamide─前田哲也** 地方独立行政法人秋田県立病院機構秋田県立脳血管研究センター神経内科診療部部長パーキンソン病の治療─ 変貌する概念と治療戦略パーキンソン病治療は主に薬物療法が担っており,早期から進行期にわたる長期的な展望にたった薬剤選択が行われている.現在の治療エビデンスはドパミン補充療法のコンセプトに従って築かれてきた.しかし近年,本邦からドパミン系神経伝達を直接介することなく大脳基底核回路を動かし,あるいはそれ以外の運動関連システムを調節することにより症状改善を促す治療薬の開発が相次いでいる.イストラデフィリンはアデノシンA2A受容体拮抗作用により大脳基底核回路からの運動出力を調整するまさしく非ドパミン系薬剤として世界初であり,ゾニサミドは抗てんかん薬としてすでに用いられてきたが,ドパミン系神経伝達に寄与するのみならず非ドパミン系神経伝達などにも作用機序を有するユニークな薬剤であることが再発見された.本稿ではこれらに関する治療エビデンスを紹介し,実際のパーキンソン病治療への適用については期待を込めた提案をしてみたい.a b s t r a c t