カレントテラピー 33-10 サンプル

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76 Current Therapy 2015 Vol.33 No.101020いる1).これは抗PD薬であるエンタカポンと同様の治療効果を期待し得る.静間らは,22例のPD患者に対し,抗PD薬と併用する形で川?茶調散を投与したところ,4週間後に22例中14例でUnified PD RatingScale(UPDRS)スコアの改善を認めたと報告した1).2 姿勢異常PDでは,立位での前傾姿勢や歩行時に次第に速度が速くなり,前のめりになって転倒しそうになる突進歩行など,歩行や姿勢の異常がみられる.座位においても,姿勢を一定に保持することができず,前方や側方に体が傾斜し,自力では元に戻せなくなることがある.このような姿勢異常に対して抗PD薬は効果がなく,治療抵抗性であることが多い.この姿勢異常に対して柴サイ朴ボク湯トウが有効であったとする症例報告がある2).柴朴湯の姿勢障害改善効果に関する作用機序は明らかではないが,柴朴湯に含まれる生薬「厚コウ朴ボク」の主要活性成分であるmagnololやhonokiolには中枢性筋弛緩作用,脊髄反射抑制作用や,グルタミン酸受容体への拮抗作用が報告されている3).また,厚朴の水エキスには,ドパミンD2受容体へ結合能のある成分が含まれているとの報告もある4).その成分は同定されておらず,薬理学的作用も明らかではないが,今後,厚朴のもつ神経系への詳細な作用の解明が期待される.Ⅲ 非運動症状PDの非運動症状は,運動症状以上に患者や介護者の生活の質(quality of life:QOL)に悪影響をもたらす.漢方薬は非運動症状を改善させ,QOLの向上が期待できる.1 消化機能障害PDでは,運動症状に先行して,便秘や食欲低下などの消化管機能異常が高率に認められる.病理学的に,運動症状が出現する前段階の早期からLewy小体の集積が延髄の迷走神経背側核に認められ,さらに消化管壁内のAuerbach神経叢にもLewy小体が出現することが確認されており,これが,PDの消化機能障害の原因と考えられている.1)胃症状胃排出能の低下は,レボドパの吸収部位への到達を遅らせて薬効発現に影響を及ぼし,delayed -onやno-on現象をもたらす.六リッ君クン子シ湯トウには,胃排出能の低下を改善させる効果があることが報告されている.Doiらは,20例のPD患者の胃排出能を検討するため,13 C呼気検査における13 C最大値到達時間を,六君子湯投与前後で測定し,比較した.その結果,服用3カ月後に67%の症例において胃排出能が改善した5).さらに,PDの非運動症状としての胃症状のみならず,レボドパ製剤自体による胃運動障害を予防する効果もあることが,ラットを用いた研究で示されている6).六君子湯の作用機序として,セロトニン受容体5-HT2Bや5-HT2Cに対して拮抗的に作用し,消化管ホルモンであるグレリンの分泌を促進させ,消化機能を改善させることが判明している7).Hiyamaらは,wearing-off 現象(薬効の持続時間短縮を伴う運動症状の日内変動)を呈するPD 患者7例に六君子湯を投与したところ,胃の排出能が改善することで血中レボドパ濃度の変動が抑えられ,抗PD薬のon時間が延長したと報告した8).2)排便障害PDの排便障害は,非運動症状のなかで最も多い症状のひとつであり,PD患者の6割以上に排便回数の低下,排便困難が認められたとの報告がある.さらに胃腸機能の低下により便秘が重度になれば,消化管からの抗PD薬の吸収が妨げられ,悪性症候群の原因ともなり得ると報告されている.大ダイ建ケン中チュウ湯トウがPD患者の低下した腸管運動を促進し,排便障害を緩和する効果があると報告されている.Sakakibaraらは,パーキンソニズムを呈する患者10例(PD 6例,多系統萎縮症4例)に対して大建中湯を投与し,放射線不透過マーカーを用いて大腸通過時間を測定し下部消化管機能を評価した.その結果,大建中湯は大腸通過時間を短縮させ,排便障害を改善することが示された9).また,大建中湯以外でPD患者の慢性便秘に適している下剤として,経験的に麻マ子シ仁ニン丸ガンや桂ケイ枝シ加カ芍シャク薬ヤク大ダイ黄オウ湯トウが用いられており,一定の効果が認められている.しかし,これらの漢方薬