カレントテラピー 33-10 サンプル

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カレントテラピー 33-10 サンプル

Current Therapy 2015 Vol.33 No.10 37変貌するパーキンソン病治療981つ薬剤は,ドパミン系抗PD病薬を用いた治療と組み合わせ,さらに相加的な効果を示す可能性,またドパミン系製剤で問題が生じた際にも,非ドパミン系機序に伴う効果を示すことで,PD治療の選択肢を広げることが期待される.Ⅶ L-dopaの再評価と投与開始時期の変化L -dopaは,DAと比べ,①治療早期の副作用が少ない,②薬物相互作用も少ない,③廉価であるなどの利点があり,さらに④投与初期の用量設定が簡単,⑤投与初期から薬効が高く,自覚的・他覚的にも著効する.約半世紀に及ぶ使用経験,またその間に出現したさまざまな薬剤と比較しても,L -dopaに勝る薬剤は出現しておらず,近年,再度注目を集める状況となっている.実験データからL -dopa はドパミン神経細胞の変性,すなわち疾患の進行を促進する可能性が指摘されていたが,実際の患者において神経変性を促進し,進行を早めるという根拠はなく,米国神経学会のpractice parameterでもL -dopaの神経毒性は否定されている12).ELLDOPA studyは,未治療PD患者におけるプラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験で,L-dopa/DCIの投与量は3群,150mg, 300mg,600mg/日が設定され,L -dopa投与により運動症状の進行は助長されない,むしろ早期の投与が症状の改善作用を示す可能性を示唆し,大きな注目を集めた13).600mg/日内服群では,ジスキネジアの発症頻度が有意に高かったが,L -dopa投与中止後2週間の時点で,UPDRSスコアが有意に低いこと,線条体のdopamine transporter(DAT)へのβ -CIT結合能がプラセボ群に比べ有意に低いことが示された.したがって,L-dopa治療はジスキネジアを誘発する一方,運動症状の進行を促進することはなく(むしろ改善作用が期待され),DAT結合能の低下はこれらの結果に関与していないことが証明された.本試験結果で,L -dopa治療群が薬剤中止後2週間の時点で,プラセボ群に比較しUPDRSスコアが良好に保たれていたこと(図3)は大きな驚きでもあり,神経伝達物質としてのドパミンを,早期から十分に供給することが,ひいては運動症状を発症している神経回路そのものの機能維持につながる可能性も想定される.もちろん,患者ごとの慎重な判断が必須であるが,発症早期の適切な時期に,適切な用量(少量~中等量)のL -dopa 投与を開始する治療方針に関する,過度の問題意識の改善の大きなきっかけとなった.また,ラサギリンによる巧妙なdelayed start designの臨床試験(ADAGIO)の結果(図4)14)からも,早期の適切な治療開始を推奨する結果が得られたと解釈可能である.未治療患者で,これらの薬剤での治療を早期に開始した群のほうが,6カ月のdelay後の運動症状の変化量疾患修飾効果の可能性投与前週投与中止12-8-6-4-202468102 6 10 14 18 22 26 30 34 38 42 46プラセボ150mg300mg600mg(units)図3ELLDOPA study〔参考文献13)より引用改変〕