カレントテラピー 33-1 サンプル

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12 Current Therapy 2015 Vol.33 No.112によって糸球体濾過されたグルコースの約90%を取り込み,残りの約10%を強いパワーをもったSGLT1によって完全に再吸収するという2段構えの取り込み機構により,エネルギー消費を最小に抑え,かつ完全に再吸収している.SGLT2が約10%のグルコースを取りこぼしてしまうのは,SGLT2が飽和したためではなく,SGLT2のパワー不足(濃縮力が低いこと)のためである.後述のように,正常血糖では,糸球体濾過されたグルコースの約90%の取り込みに際し,SGLT2は約50%しか働いておらず,さらに約50%の予備能を残している9).Ⅴ 糖再吸収系のもつ予備能前述のようにSGLT2が約90%,SGLT1は約10%の取り込みを担うため,正常血糖において糸球体で濾過される180g/日のグルコースのうち,SGLT2が160g,SGLT1が20gを取り込むことになる(図2A)9).このとき,SGLT2は50%が稼働し,SGLT1は15%が稼働しているのみである.したがってSGLT2は50%,SGLT1は85%の予備能を残している(図2A)9).このように糖再吸収系が高い予備能をもつことは,SGLT2阻害薬の作用を理解するために重要な情報となる.SGLT2阻害薬によってSGLT2を完全に阻害しても,尿中に排泄されるのは糸球体濾過されたグルコースの30~50%であることが知られている.これは,SGLT2が阻害されることで近位直尿細管に大量のグルコースが流入し,SGLT1が100%稼働することによって120gのグルコースが再吸収されるためである(図2B)9).すなわち,正常血糖では,SGLT2を完全に阻害しても,180gからSGLT1によって再吸収される120gを差し引いた60gが尿中に排泄されることになり,これは糸球体濾過されたグルコースの1/3にあたる(図2B).また高血糖状態でも,SGLT2を阻害した場合には,糸球体濾過されたグルコース量からSGLT1によって再吸収される120gを差し引いた量が尿中に排泄される.実際は,血糖値は食事等に伴い変動し,SGLT2阻害薬の血中濃度も時間とともに減衰するため,厳密には経時的な変動を考慮した評価が必要ではあるが,前述の数値は目安としてとらえることができる.(180L/日)(1,000mg/L)=180g/日(180L/日)(1,000mg/L)=180g/日糸球体で濾過されるグルコース180g/日糸球体で濾過されるグルコース180g/日SGLT2阻害薬で完全にSGLT2が阻害された場合正常血糖A B正常血糖SGLT2に再吸収されるグルコース160g/日(50%飽和)SGLT1に再吸収されるグルコース20g/日(15%飽和)尿糖排泄なしSGLT2に再吸収されるグルコース0g/日SGLT1に再吸収されるグルコース120g/日(100%飽和)尿糖排泄60g/日SGLT1SGLT2 SGLT2S1Glucose GlucoseS1S3 S3SGLT1図2 グルコース再吸収系の高い予備能A:正常血糖では,1日あたり180gのグルコースが糸球体で濾過されるが,そのうち160gがSGLT2,20gがSGLT1により再吸収される.このとき,SGLT2は50%,SGLT1は15%が稼働しており,SGLT2は50%,SGLT1は85%の予備能を残している.B:SGLT2阻害薬によってSGLT2が完全に阻害された場合,SGLT1が100%稼働して120gのグルコースを再吸収できる.〔参考文献9)より引用改変〕