カレントテラピー 33-1 サンプル page 4/34
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カレントテラピー 33-1 サンプル
Current Therapy 2015 Vol.33 No.1 77SGLT2阻害薬― 摩訶不思議な糖尿病治療薬―企画横浜市立大学大学院医学研究科分子内分泌・糖尿病内科学教授寺内康夫近年,2型糖尿病治療薬が次々と登場し,治療の組み立て方が急速に変化しつつある.今回,特集を組んだNa+/グルコース共役輸送担体(SGLT)2阻害薬は新しい作用機序による経口糖尿病治療薬であり,2014年日本でも使用可能となった.SGLT2は腎臓の近位尿細管に存在し,糸球体で濾過されたグルコースを能動輸送により管腔側から尿細管細胞内に取り込む役割を担う.これまでの2型糖尿病治療では,血糖を正常化させる機構として,主にインスリンおよびその標的臓器に焦点があてられてきたが,SGLT2阻害薬はグルコース恒常性の一端を担う腎臓に注目し,余剰な血糖を尿糖として体外に排出させるという新たな発想に基づくものである.SGLT2阻害により血糖が低下することに加え,低血糖リスクを回避しつつ,体重減少作用もある.さらに副次的な効果として,血圧や脂質代謝などの改善も示唆されている.こう述べると夢のような薬剤に思えるが,実際に使用してみるとさまざまな問題が浮き彫りになってきており,尿路感染症・性器感染症・血管内脱水など,薬剤の作用機序からして起こるリスクの高い病態が実際に認められている.因果関係は不明であるが,本薬剤使用者で死亡例も出ている.また,先行販売された欧米では問題視されていなかった皮疹・皮膚障害も続々報告されてきている.SGLT2阻害薬は既存の糖尿病治療薬と作用機序が異なるため,併用による相加的効果が期待できるが,本薬剤を現在の治療アルゴリズムのどの段階に組み込むべきか,現時点では明らかでない.このような現状を鑑み,SGLT2阻害薬に関する特集を企画した.SGLT2阻害薬の開発の経緯および病態生理,臨床上の特徴と注意すべき有害事象,糖尿病治療におけるSGLT2阻害薬の位置づけ・使い分け,SGLT2阻害薬の長期的な有効性と安全性,特にCVイベントと骨格筋・骨への影響を考える構成にした.執筆はこの領域に関して造詣が深い先生にお願いした.また,座談会では,「SGLT2阻害薬―さらなる糖尿病診療のパラダイムシフトはおこるのか?」をテーマに忌憚ないご意見を伺った.本書が先生方の手元に届くころには,この“摩訶不思議”な糖尿病治療薬SGLT2阻害薬の処方経験が増え,その感触と同時に課題を認識されている先生が増えてくると思われる.本企画が多くの臨床医のお役に立つことを心から願い,エディトリアルとしたい.エディトリアル