カレントテラピー 33-1 サンプル

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66 Current Therapy 2015 Vol.33 No.166されている.この血圧低下は,SGLT2阻害薬の浸透圧利尿作用と体重減少によるものと考えられる.脂質に対する影響は,海外のデータからはカナグリフロジンが用量依存性にLDLコレステロール(LDL-C)を上昇させることが報告されている15)が,HDLコレステロール(HDL -C)やトリグリセライド(TG)については変動幅は大きくないものの,全体としては改善する方向に変動するとされている.この変動は,血糖値低下および体重減少によって生じていることが示唆される16).つまり内臓脂肪量の低下,およびインスリン抵抗性の改善に伴いLPL活性が上昇するため,TGを豊富に含んだカイロミクロンや超低密度リポ蛋白質(VLDL)の代謝が亢進し,その過程で成熟するHDLが上昇すると考えられる.4 適応症例と注意点SGLT2阻害薬は低血糖リスクが低く,体重減少効果を有する薬剤であるが,体重減少の3分の2は脂肪重量で,3分の1は除脂肪重量,つまり筋肉量と骨量の低下が認められる9).海外で行われたメトホルミン効果不十分な肥満症例に対する研究では,SGLT2阻害薬を追加したことにより脂肪体重,除脂肪体重はともに有意に低下したが,特に脂肪体重の低下を著しく認めた.脂肪面積においては,内臓脂肪面積だけでなく,皮下脂肪面積においても低下させていた(図2)17).脂肪面積を低下させる作用があることより,インスリン抵抗性を改善させる可能性があることも示唆される.一方,非肥満症例においては栄養状態増悪や脂肪酸代謝による血中ケトン上昇リスクが言われているが,栄養学的にどのような意義をもつのか今後の検討されるべき課題である.以上より,本薬剤の最もよい適応症例は肥満2型糖尿病と考えられる.一方で,高齢者および下痢・嘔吐症状などの消化器症状を認める患者に対しては脱水状態の増悪,尿路・性器感染症の増加などへの配慮が必要と考えられる.腎障害進行の患者では,腎機能別の解析において,腎機能の低下とともに,HbA1cの低下効果は減弱することが明らかになっており,高度の腎機能低下例への投与は望ましくない.しかしながら,HbA1cの低下効果は減弱するが,体重の低下傾向は腎機能低下例でも認められており,ある程度の臨床効果がみられる可能性はあるが,添付文書上では中等度腎機能障害患者に対しては慎重投与となっている.現時点で考え得るSGLT2阻害薬投与の適した症例は,自律神経障害および腎症が比較的軽く,体重増加が懸念される2型糖尿病の成年症例(妊婦や高齢者を除く)であると考えられる.慎重投与は高齢者,やせ型体系,脳血管障害の既往のある患者(脱水に伴うと考えられる脳梗塞リスクがあるため),腎機能低下者や利尿剤内服中の症例と考えられる.カナグリフロジン300mgシタグリプチン100mg投与期間(%)-3.50 6 12 18 26 34 42 52(週)-3.0-2.5-2.0-1.5-1.0-0.500.51.0変化量0.3%(0.1kg)-2.5%(-2.3kg)-2.8%(-2.4kg)p<0.001ベースラインからの体重変化率ベースラインの体重89.6kg87.6kg図1体重変化量の推移対象:メトホルミンとSU薬の併用でコントロール不十分な2型糖尿病患者 755例.方法:シタグリプチン100mg群,カナグリフロジン300mg群に無作為に割り付け,1日1回52週間投与.〔参考文献13)より引用改変〕