カレントテラピー 33-1 サンプル

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56 Current Therapy 2015 Vol.33 No.156尿病患者に対して,心血管死などの抑制効果がある可能性もある.最近登場したインクレチン関連薬は血糖降下作用のみならず,多様な膵外作用を有し,動物実験などにおいても抗動脈硬化的に作用することが報告されている.血糖変動幅の縮小,酸化ストレスの減少や食後のトリグリセリド(TG)値の改善,さらに血管内皮機能の改善効果などが報告されている7).しかし,2013年に発表されたサキサグリプチンを用いたSAVOIR-TIMI53,アログリプチンを用いたEXAMINE試験では,いずれの薬剤も心血管イベントの抑制効果は,プラセボ群と同等であり,現時点でDPP -4阻害薬が心血管イベントを減少させるというエビデンスは得られていない.今後の検討が期待される(表2).Ⅲ SGLT2阻害薬と心血管イベント腎糸球体より濾過されたグルコースは,近位尿細管起始部に存在するSGLT2で約90%,さらに遠位部に存在するSGLT1により残りの約10%が再吸収される.腎機能が正常であれば1日に約150~180gのグルコースが尿細管より再吸収されている.2型糖尿病患者においてはSGLT2の発現および活性が増加し,尿細管からのグルコース再吸収量が増え,糖毒性における原因のひとつとして考えられている8).健常人にSGLT2阻害薬を投与した場合,尿中グルコース排泄量は55~77g/日でプラトーとなる.SGLT2阻害によりSGLT1からのグルコース再吸収が増加するためと考えられ,グルコース糸球体濾過量の30~40%程度しか尿中に排泄されない.このため健常人にSGLT2阻害薬を投与しても,グルコースの著しい喪失はなく低血糖はきたさないとされている.2型糖尿病患者にSGLT2阻害薬を投与した場合の尿中グルコース排泄量は70~100g/日と報告されており,1日約300~400kcal分のエネルギーが体外に排出される.その結果,血糖値低下,HbA1c値低下のみならず体重減少が認められる.体重減少によりインスリン抵抗性も改善し,膵臓に対する負荷軽減や糖毒性の解除の結果,膵β細胞機能の回復や膵保護作用も期待されている8),9).また,尿酸や中性脂肪の低下,HDLコレステロールの上昇,低血糖をきたしにくいなどの特色は心血管イベントを抑制させる可能性を示唆している(図2).1 体重減少作用SGLT2阻害薬は尿糖排泄を促進させることで尿中へのカロリー喪失による体重減少をもたらす.この効果は従来の糖尿病治療薬では認められなかった,非常に特徴的な効果といえる.初期の体重減少は,主に浸透圧利尿による水分喪失が関与しているといわれているが,数週間投与を継続すると脂肪重量,皮下脂肪および内臓脂肪の双方の減少が認められる10).内臓脂肪蓄積に伴い生じる脂肪組織の慢性炎症はアディポサイトカインバランスの変化を引き起こし,全身のインスリン抵抗性を惹起すると同時に血管内皮細胞機能障害を誘導するとされている.SGLT2阻害薬による体重減少効果は約6カ月程度でプラトーに達するとの報告もある11).動物実験では,ダ体重高血圧浮腫脂質異常低血糖リスクビグアナイド薬減少/不変不変不変改善低スルホニル尿素(SU)薬増加不変不変variable 中チアゾリジン薬増加改善浮腫改善低グリニド薬増加不変不変不変中α-グルコシダーゼ阻害薬不変改善不変不変低DPP-4阻害薬減少/不変不変不変不変/改善低GLP-1受容体作動薬減少改善不変改善低インスリン増加関連*1 浮腫(稀)*2 改善高SGLT2阻害薬減少改善不変limited date 低表2糖尿病治療薬と心血管イベントリスク*1:高インスリン血症と高血圧が関連,*2:急性インスリン浮腫〔Progress in Medicine Vol.34 No.42014.4より作図〕