カレントテラピー 33-1 サンプル

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28 Current Therapy 2015 Vol.33 No.128SGLT2阻害薬投与時にみられる尿糖排泄量のパラドックスの主な要因はSGLT2発現部位よりもより遠位に位置するSGLT1にあると考えられているが,それを理解するにはSGLT1による最大グルコース輸送能を知る必要がある.SGLT2-/ -マウスや最大用量のSGLT2阻害薬を服用した症例におけるグルコース再吸収量〔(糸球体グルコース濾過量)-(尿糖排泄量)〕はSGLT1の最大グルコース輸送能を表すと考えられるが,正常耐糖能者へのダパグリフロジンやカナグリフロジンの投与時の最大尿糖排泄量は55~60g/日であり,薬剤用量を増加させてもその量に変化はない.この結果に基づくと,SGLT1による最大グルコース輸送量は約120g/日〔(糸球体グルコース濾過量:180g/日)-(尿糖排泄量:60g/日)〕となり,SGLT2阻害薬非投与時のSGLT1は余力を残していると推定され,SGLT2阻害薬投与時にはSGLT1によるグルコース輸送量の増加を受け,尿糖排泄量は糸球体グルコース濾過量の30~40%を超えないと考えられる20).Ⅵ SGLT変異に伴う遺伝性疾患SGLT 遺伝子変異は尿糖排泄が増加する.グルコース・ガラクトース吸収不全症はSGLT1変異によるまれな疾患であり,SGLT1が主に発現する消化管からのグルコースやガラクトースの吸収不良を基本病態とし,新生児期に下痢や脱水を引き起こす.グルコース・ガラクトース吸収不全症の場合,典型的には尿糖陰性か陽性であったとしても軽度であり,尿糖再吸収におけるSGLT1の役割がSGLT2と比較すると小さいことに一致する.家族性腎性糖尿(familial renalglucosuria:FRG)は常染色体劣性遺伝形式をとり,SGLT2 遺伝子変異により尿糖を認め,グルコース滴定曲線の結果から2病型に区別される.TypeA(SGLT2蛋白の減少)は最大グルコース輸送能および尿糖排泄閾値がともに低下している病型で,typeB(SGLT2のグルコース親和性低下)は尿糖排泄閾値が低下しているが最大グルコース輸送能は正常で,グルコース滴定曲線のsplayが拡大した病型である.その他,尿糖再吸収を完全に認めないtypeO(尿糖排泄量100g/1.73m2以上)という非常にまれな病型も存在する.一般的に尿糖排泄量10g/1.73m2/日未満の軽度の尿糖を認める場合はSGLT2 遺伝子のヘテロ接合体変異,尿糖排泄量10g/1.73m2/日以上の重度の尿糖を認める場合はホモ接合体変異もしくは複合ヘテロ接合体変異が発症に関与していると考えられている.TypeOの場合には循環血液量減少や低血糖傾向を示し致死的となる場合が報告されているが,大部分のグルコース再吸収20 ~ 35g(10 ~ 20%)糸球体グルコース濾過量180g/日グルコース排泄0g(0%)グルコース再吸収145 ~ 160g(80 ~ 90%)SGLT2 SGLT1グルコース再吸収0g(0%)グルコース再吸収120 ~ 130g(65 ~ 70%)グルコース排泄50 ~ 60g(30 ~ 35%)SGLT2 SGLT1通常時の糖輸送担体によるグルコース輸送能SGLT2阻害時の糖輸送担体によるグルコース輸送能糸球体グルコース濾過量180g/日SGLT2阻害図4SGLT2阻害薬による尿糖排泄のパラドックス〔参考文献20)から作図〕