カレントテラピー 33-1 サンプル

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Current Therapy 2015 Vol.33 No.1 27SGLT2阻害の病態生理(基礎的検討)27よる1型糖尿病モデルラットの検討において,それぞれSGLT2やGLUT2の発現がコントロールラットと比較し増加することが報告されており,このことは1型糖尿病患者における尿糖再吸収能が増加している15)ことに一致する.また,2型糖尿病患者の尿から採取した近位尿細管細胞を用いた検討16)では,SGLT2mRNAやGLUT2 mRNA発現量が非糖尿病者と比較し増加し(図3),非代謝性グルコース誘導体であるmethyl-α-D-[U-14C]-glucopyranoside(AMG)を用い測定したグルコース取り込み量も3倍以上に増加していた(図3).さらに,2型糖尿病モデルZuckerdiabetic fattyラットにおいてSGLT2発現に差はなかったものの,GLUT2の発現および活性が増加していた17)との報告もある.このように,ヒトやげっ歯類での報告は,慢性高血糖に伴う糸球体グルコース濾過量の増加によりSGLT2やGLUT2の発現および活性が高まることを示唆している.腎臓は体内に取り込まれた栄養素を維持するための最後の関所であり,進化の過程において腎臓はエネルギー喪失が最小限になるよう複雑なシステムを獲得したと考えられるが,この順応機構が糖尿病患者においては仇となり,慢性高血糖の助長の一因となっている.Ⅴ SGLT2阻害薬による尿糖排泄のパラドックスSGLT2は尿細管におけるグルコース再吸収の80%以上を担っており,正常耐糖能者の糸球体グルコース濾過量約180g/日のうち,約145g/日以上を再吸収している(図4).そのため,理論的にはSGLT2を完全に阻害した場合145g/日以上の尿糖が排泄されるはずであるが,実際にはSGLT2阻害薬を服用した正常耐糖能者の尿糖排泄量は糸球体グルコース濾過量の30~40%を超えない(図4).例えば,正常耐糖能者へのダパグリフロジン20mg投与による尿糖排泄量は55g/日であり,さらに投与量を増加させダパグリフロジン投与量を500mgとしても,尿糖排泄量は58g/日とさらなる増加は認めていない18).同様の結果は他のSGLT2阻害薬においても確認されている19).このような糖輸送担体タンパクの発現尿細管上皮細胞からのグルコースの取り込み01234567SGLT2 GLUT2健康人2型糖尿病患者健康人2型糖尿病05001,0001,5002,0002,500***AMG取り込み(CPM)タンパク発現量図3 2型糖尿病におけるSGLT2発現量の増加およびグルコース再吸収量の増加Mean±SE*p<0.05(Student’s t検定),†剥離したヒト近位尿細管上皮細胞(HEPTECs)対象:メトホルミンとACE阻害薬を使用中で,空腹時血糖値<126mg/dL,アルブミン/クレアチニン比<30mg/mLの2型糖尿病患者.対照は健康人男性とした.方法:(左図)健康人(4例)および2型糖尿病患者(4例)の新鮮尿から単離・培養したヒト近位尿細管上皮剥離細胞(HEPTECs)を用いて,ウエスタンブロッティング法によりSGLT2およびGLUT2のタンパク発現量を測定.(右図)健康人(3例)および2型糖尿病患者(3例)の新鮮尿から単離・培養したHEPTECsmethyl-α-D-[U-14C]-glucopyranoside(AMG)を添加し,細胞内へのAMG取り込みを測定.〔参考文献16)より引用〕