カレントテラピー 33-1 サンプル page 13/34
このページは カレントテラピー 33-1 サンプル の電子ブックに掲載されている13ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。
概要:
カレントテラピー 33-1 サンプル
Current Therapy 2015 Vol.33 No.1 2525Ⅱ 尿細管におけるグルコース再吸収の生理グルコースは糸球体毛細血管膜から自由に濾過されるため,非常に多くの血中グルコースがボウマン嚢から尿細管に流入する.血糖値を100mg/dL,1日糸球体濾過量(glomerular filtration rate:GFR)を180L/日と仮定した場合,腎糸球体から濾過されるグルコース量は約180g/日(125mg/分)となり,健常人で尿糖排泄がほとんどみられないことから逆算すると,尿細管では1日約180gのグルコースが再吸収されていることになる6).生命維持に不可欠なグルコースを維持するためのこのメカニズムは,近位尿細管に発現するSGLTおよび促進拡散型グルコース輸送担体(glucose transporter:GLUT)の協調により担われており,グルコースはほぼ過不足なく再吸収される.この近位尿細管におけるグルコース再吸収能は糸球体グルコース濾過量の増加とともに線形に増加する(図1)が,尿細管におけるグルコース輸送能はSGLTsに依存しており,この輸送能を超える過剰なグルコースは尿中排泄される.健常人における尿細管での最大グルコース輸送量(TmG)は375mg/分(425g/日)とされている7),8).正常耐糖能の場合の糸球体グルコース濾過量は約125mg/分であり,グルコース再吸収能はかなりの余力を残しているが, 理論的には血糖値上昇(300mg/dL以上)や糸球体過剰濾過(125mL/分以上)の場合には最大グルコース輸送能を超えると推計されている7).しかし,注目すべきことに,実際には血糖180~200mg/dL以上や糸球体グルコース濾過量250mg/分が尿糖排泄閾値とされ(図1)8),この最大グルコース輸送能と尿糖排泄閾値の乖離の主な原因は個々のネフロンの最大グルコース輸送能が異なること,もしくは糸球体尿細管不均衡に起因すると考えられている.Ⅲ 尿糖再吸収におけるSGLT1およびSGLT2の役割SGLTは尿細管上皮細胞の管腔側に発現しており,二次性能動輸送にてグルコースやガラクトースを尿細管腔から上皮細胞内へと運搬する.つまり,上皮細胞の血管側に発現するNa-K ATPaseがATPを消費しながら上皮細胞内の3個のナトリウムを2個のカリウムと交換輸送することで,上皮細胞内ナトリウム濃度は尿細管腔と比較し相対的に低濃度となり,SGLTはそのナトリウム濃度勾配を利用してナトリウムとグルコースを同時に細胞内に取り込むことができる.また,細血糖値再吸収排泄濾過60040020000 200 400 600 800TmG(理論上)TmG(実際)RTG(実際)RTG(理論上)グルコース濾過/再吸収/排泄(mg/分)(mg/dL)図1正常耐糖能者における血糖値と尿糖再吸収の関係〔参考文献8)より引用改変〕