カレントテラピー 33-1 サンプル

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24 Current Therapy 2015 Vol.33 No.124Ⅰ はじめに健常人におけるグルコース恒常性は,膵臓,肝臓,骨格筋,脂肪組織および神経内分泌システムが巧妙に相互作用することにより非常に狭い範囲で維持されている.ナトリウム依存性グルコース輸送担体(sodium glucose co -transporter:SGLT)阻害薬の登場により,グルコース恒常性維持における腎臓の役割が注目されている.腎臓は主に糖新生における役割が注目され,12時間の絶食状態におけるグルコース産生への寄与度は,肝グリコーゲン分解が50%,肝糖新生が30%,腎糖新生は20%とされている1).また,高血糖状態では腎臓における糖新生関連酵素やglucose -6-phosphataseの活性が亢進していることが動物実験で報告されており2),3),糖尿病患者の体内グルコース産生に対する腎糖新生の寄与度は肝糖産生と同等まで増加している4).さらに,ケトアシドーシスのようにpHが低下した状態では,肝糖産生は減少し,腎糖産生が増加することも知られており,ケトアシドーシス時の糖産生は主に腎臓が寄与していると考えられている5).さらに,腎臓は,腎皮質における糖新生のみならず,腎近位尿細管でのグルコース再吸収,腎髄質におけるグルコース利用とグルコース恒常性維持に大きく関与している.2014年4月中旬以降にSGLT2阻害薬が使用可能となり,尿糖再吸収機構や尿糖再吸収抑制によって生じる事象が注目されており,本稿では,特に腎近位尿細管での尿糖再吸収に関連する事項について概説する.*1 川崎医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科学講師*2 川崎医科大学総合内科学1特任教授SGLT2阻害薬― 摩訶不思議な糖尿病治療薬尿糖再吸収抑制下田将司*1・加来浩平*2通常,糸球体濾過されたグルコースは,近位尿細管に発現するナトリウム依存性グルコース輸送担体(sodium glucose co-transporter:SGLT)1/2の協調により,エネルギー恒常性維持のために過不足なく再吸収される.また,2型糖尿病患者の近位尿細管では,高血糖に伴うSGLT2発現の増加に比例し尿糖再吸収が増加し,慢性高血糖の一因となっている.SGLT2は尿糖再吸収の80%以上を担うとされ,SGLT2阻害薬による尿糖再吸収抑制は血糖改善に寄与するが,その尿糖排泄量は糸球体グルコース濾過量の50%未満とSGLT2の尿糖再吸収能を大きく下回る.これは,SGLT2の下流に存在するSGLT1の尿糖再吸収能が増加しているためと考えられており,生体のエネルギー恒常性維持機構が働いていると推察される.SGLT2 を責任遺伝子とする家族性腎性糖尿(familial renal glucosuria:FRG)は生命維持に関する大きな異常を認めないため,SGLT2阻害薬の長期安全性は担保されているように思われるが,FRGと2型糖尿病では病態が異なるため,注意深い観察が今後も必要である.