カレントテラピー 33-1 サンプル

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Current Therapy 2015 Vol.33 No.1 13SGLT2阻害薬の開発13糖尿病において血糖値が高まると糸球体濾過されるグルコース量が上昇するため,SGLT2阻害薬による尿糖排泄量は血糖値に伴い上昇することになる.これは,血糖値が高いほどSGLT2阻害薬の作用が顕著であることのひとつの理由となっていると考えられる.Ⅵ SGLT2の発現変動2型糖尿病患者の尿沈渣中に回収される尿細管上皮細胞を培養した実験において,健康人と比べて,SGLT2の発現が上昇することが報告され,また2型糖尿病モデル動物であるZDFラットの腎臓でのSGLT2の発現上昇が報告された12),13).このようなことから,2型糖尿病では,尿細管でのSGLT2の発現の上昇によりグルコース再吸収能が上昇すると考えられている.グルコース再吸収能の指標であるグルコース尿細管最大輸送量(TmG)が2型糖尿病患で上昇すると想定されているが,2型糖尿病患者と健康人のTmGを比較し,これを支持する報告がなされている(図3)14).高血糖状態でもSGLT2がグルコースを再吸収し続けることが高血糖状態を維持することに寄与しているが,2型糖尿病においてSGLT2の発現が上昇していることは,SGLT2阻害薬を投与することの意義をより確かなものとしている.ただし,SGLT2阻害薬の臨床用量はSGLT2を高度に阻害する用量に設定されているため,SGLT2阻害薬を投与することでTmG値は健康人のTmGを大きく下回ることになる14).Ⅶ おわりにSGLT2阻害薬の開発は,尿糖排泄作用のある天然の化合物であるフロリジンが糖尿病動物において,血糖降下作用,インスリン分泌能回復,インスリン抵抗性改善効果を示すことが報告されたことに端を発するが15),16),フロリジン自体は,小腸のβ-グルコシダーゼによって分解されるために経口投与ができず,またSGLT1も阻害してしまう.そのため,グルコース/ガラクトース吸収不全症のような下痢を副作用として起こしてくる可能性があることから,臨床開発されなかった17).SGLT2阻害薬の開発においては,このような背景の下にSGLT2への選択性の高い化合物が求められた.フロリジンを基に構造展開がなされ,分子同定されたSGLT2への最適化がなされていった17).血漿グルコース濃度健康人ベースライン健康人SGLT2阻害薬2型糖尿病ベースライン2型糖尿病SGLT2阻害薬グルコース再吸収量/濾過量閾値閾値閾値閾値TmG=317TmG=420TmG=184TmG=154800A CB D600400200080060040020000 200 400 600 0 200 400 600(mg/dL)(mg/分)図3糖尿病でのグルコース尿細管最大輸送量の上昇とSGLT2阻害薬の効果健康人(A)に比べて,2型糖尿病(B)ではグルコース尿細管最大輸送量(TmG;最大の再吸収量)が上昇している.SGLT2阻害薬の臨床用量は,健康人(C),2型糖尿病(D)ともに,TmG値を健康人のベースラインより低い値に低下させる.〔参考文献14)より引用改変〕