カレントテラピー 32-9 サンプル

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12 Current Therapy 2014 Vol.32 No.9844ステロール+30 mg/dLのレベルである.すなわち,一次予防においては,カテゴリーⅠが190未満,カテゴリーⅡが170未満,カテゴリーⅢが150未満,二次予防においては,130未満が目標値ということになる.Ⅶ 原発性(遺伝性)脂質異常症について家族性に高コレステロール血症をきたす疾患に家族性高コレステロール血症(familial hypercholesterolemia:FH)がある.LDL受容体の遺伝子異常のほか,PCSK9やアポBの遺伝子異常などが同定されている.FHはきわめて冠動脈疾患のリスクが高いことから,早期診断・治療が重要である.現在では,成人(15歳以上)FHヘテロ接合体診断基準が設定されている.FHは動脈硬化性疾患のリスクが高いため,運動療法を始める前に動脈硬化性疾患のスクリーニングが必須である.FH患者のなかには,FHと診断されることなくスタチンが投与され見過ごされている例もあり,高リスク患者のため積極的にFHを診断する姿勢が重要である.家族性に高TG血症を呈する疾患には,LPL欠損症とアポ蛋白C- Ⅱ欠損症がある.前述のようにカイロミクロンやVLDL中に存在するTGを加水分解するにはLPLが必要である.また,LPLの活性化には,補酵素であるアポ蛋白C - Ⅱが必要である.LPL欠損症は,常染色体劣性遺伝でありLPLの欠損によりカイロミクロンが著増する.ヘテロ接合体においてもTGは軽度から中等度上昇する.アポ蛋白C - Ⅱ欠損症も常染色体劣性遺伝であり,補酵素であるアポ蛋白C - Ⅱの欠損によりカイロミクロンが著増する.ただし,アポ蛋白C- Ⅱは補酵素であるため,ヘテロ接合体においては高TG血症を認めない.珍しい疾患ではあるが,TGリッチなカイロミクロン,VLDLが,LPLによって加水分解を受け代謝されていく過程を理解するうえで重要な疾患である.家族性に高HDLコレステロール血症を呈する疾患にはCETP欠損症がある.コレステロール逆転送系において,HDLからVLDL,LDLへのコレステロールの転送が十分にできなくなる.ヘテロ接合体においても活性低下によりHDLが2倍程度に上昇する.Ⅷ おわりに脂質異常症のメカニズムに焦点をあてつつ,リポ蛋白,脂肪酸にも触れて概説した.メカニズムを考えるうえで遺伝性疾患であるLPL欠損症,アポ蛋白C - Ⅱ欠損症についても取り上げた.脂質異常症のコントロールについては動脈硬化を考えるうえでも今後ますます重要性を帯びてくるものと考える.その観点から,non HDLコレステロールについても言及した.脂質異常症の診断と治療の一助となれば幸いである.参考文献1)日本動脈硬化学会(編):動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版.日本動脈硬化学会,20122)Shimano H, Arai H, Harada-Shiba M, et al:Proposed guidelinesfor hypertriglyceridemia in Japan with non-HDL cholesterolas the second target. J Atheroscler Thromb 15:116-121, 20083)島野 仁:脂質代謝のメカニズム コレステロール.臨床栄養113:394-399, 2008