カレントテラピー 32-9 サンプル

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8 Current Therapy 2014 Vol.32 No.9840Ⅰ 脂質異常症の概念,定義高脂血症は,リポ蛋白分画のうち一つ以上が増加した状態と定義される.現在,高脂血症は脂質異常症と呼称変更されている.脂質管理,ならびに脂質異常症の治療という観点において,高LDLコレステロール血症,低HDLコレステロール血症,高トリグリセライド(triglycerides:TG)血症の是正が重要であるが,高脂血症という呼称では,低HDLコレステロール血症を含む表現としては適切ではないからである.血中の脂質は実際には,リポ蛋白とよばれる蛋白と結合した状態で存在している(図1).Ⅱ リポ蛋白についてリポ蛋白は,水に不溶な脂質を,吸収される部位や合成される部位から血液を介して必要箇所へ運搬するための複合体蛋白である.リポ蛋白の外側には親水性のリン脂質や遊離コレステロール,アポリポ蛋白が,一方内側には疎水性のコレステロールエステルやTGの脂質成分が粒子の大きさ,比重の違いにより存在している.血中のリポ蛋白にはその比重により,次の6種類が存在する(表1).1 カイロミクロン(カイロミクロンレムナント)密度:<0.951g/mL食事由来のTGを小腸から肝臓へ運搬する.食事の影響が大きい.食後に高TGとなるのは,カイロミクロンによるところが大きいので,TGの評価には脂質異常症の発症のメカニズム岩﨑 仁*1・島野 仁*2生活習慣に関連した疾患は,増加傾向にある.そのなかでも代謝性疾患は増加してきている.糖尿病,高血圧症,脂質異常症など日常臨床におけるcommon diseaseも例外ではない.ひとつの要因として近年のライフスタイルの変化がよく言われるところである.脂質異常症についても,こうした現状からするとますます注目すべき疾患と考えられる.脂質異常症は自覚症状を呈さないため患者の治療に対する意識が希薄化する傾向がある.しかし,虚血性心疾患,脳梗塞など動脈硬化性疾患の発症リスクとなることは明らかであり,患者の背景因子に合わせた脂質異常症の治療への関わり方が重要である.動脈硬化性疾患予防においてLDLコレステロールを管理することの重要性は言うまでもないが,LDLコレステロールを管理したうえで,non HDLコレステロールやトリグリセライドの管理も重要である.脂質異常症の発症のメカニズムに焦点をあてて,そのコントロールメカニズムを解説するとともに,脂質異常症の管理についても概説する.* 筑波大学医学医療系内分泌代謝・糖尿病内科講師* 筑波大学医学医療系内分泌代謝・糖尿病内科教授脂質異常症の診断と治療の動向― ACC/AHAガイドラインを考慮して