カレントテラピー 32-9 サンプル

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96 Current Therapy 2014 Vol.32 No.9928PCSK9大阪大学大学院薬学研究科助教 山本剛史Proprotein Convertase Subtilisin/Kexintype 9(PCSK9)は,2003年,第三の家族性高コレステロール血症の原因遺伝子として注目を集め,PCSK9の機能解明研究ならびに阻害薬開発研究が積極的に進められてきた.すでに150を超える対立遺伝子多型が報告されており,PCSK9に2種の「機能喪失型」変異を有する複合ヘテロ接合体患者においては,血中Low-density lipoprotein(LDL)コレステロール値がきわめて低値を示したことから,PCSK 9はLDLコレステロール値を制御する重要な因子であることが示されている.PCSK9は,プロタンパク質転換酵素ファミリーの9番目の因子であり,主に肝臓,小腸,腎臓で発現している.PCSK9は血中へと放出され,肝臓のLDL受容体の細胞外ドメインと相互作用し,LDL受容体を不活性化する.不活化機構に関しては,エンドソーム内にてPCSK9がLDL受容体のリサイクルを阻害し,そのまま分解へと誘導するものと考えられている.最近では,細胞内で働く「非分泌型」PCSK9の存在も示唆されている.現在スタチンによる治療が一定の成果を上げているのは事実ではあるが,目標のLDLコレステロール値に達していないケースも多く,また副作用等の問題で使用が制限されている.一方で,スタチンはSterol Regulatory ElementBinding Protein- 2(SREBP- 2)と呼ばれる転写因子を介してLDL受容体とPCSK9の双方の遺伝子発現を上昇させており,スタチンのLDLコレステロール低下効果がPCSK 9の発現上昇のため最大限に発揮されていないことが知られている.すなわち,PCSK9阻害薬はスタチンの代替としてのみならず,相互補完的な併用療法も期待できる.PCSK9阻害薬の開発は大きく分けて4つのアプローチで推し進められている.①低分子医薬,②ペプチド,抗体医薬,③核酸医薬である.低分子ではPCSK 9とLDL受容体の相互作用を阻害することが困難であると示唆されており,PCSK9阻害薬としては抗体医薬の開発が最も進んでいる.現在,2品目(Sanofi/Regeneron社とAmgen社)が第Ⅲ相臨床試験の段階にあり,これらはいずれも非常に高いLDLコレステロール低下効果が確認されており,第二のスタチンとの呼び声も高い.われわれは,独自に開発した人工核酸素材を用いて,核酸医薬を用いたアプローチを進めている.抗体医薬が血中に分泌されたPCSK9タンパク質を捕捉することで機能を発揮するのに対し,核酸医薬は細胞内に浸透し,PCSK9 mRNAを分解するため,非分泌型PCSK9の活性も抑え得る点でさらなる効果が期待される.今後,PCSK9を標的とした創薬を進めるなかで,コレステロール低下効果とイベント発症率との関係についても精査していく必要があるだろう.