カレントテラピー 32-9 サンプル

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Current Therapy 2014 Vol.32 No.9 95927家族性高コレステロール血症独立行政法人国立循環器病研究センター研究所病態代謝部 小倉正恒独立行政法人国立循環器病研究センター研究所病態代謝部部長 斯波真理子1 家族性高コレステロール血症とは?家族性高コレステロール血症(familial hypercholesterolemia:FH)は,LDL受容体関連遺伝子変異による遺伝病であり,高LDLコレステロール(LDL -C)血症,皮膚および腱黄色腫,若年性冠動脈硬化症を特徴とする.日本における心筋梗塞患者の約10%はFHであるという報告が複数なされており,発症年齢も一般より約15歳若いことから,的確な診断と適切な治療による動脈硬化症の発症進展予防がきわめて重要である.FHヘテロ接合体は500人に1人以上の頻度で認められる最も頻度の高い遺伝性代謝疾患であり,日常診療においてたびたび遭遇する.しかしながら日本におけるFHの診断率は1%未満であることが最近報告され,特に診断率の高いオランダや北欧諸国から大きく遅れをとっている.2 なぜFHを早期診断する必要があるのか?その理由は次の2点である.まずFH患者は生下時から高コレステロールに曝露されているため,遺伝的背景のない通常の高コレステロール血症に比べて動脈硬化の進展が著しい点が挙げられる.もう一つは一人のFH患者を診断することにより,その家族のなかにFH患者を見つけ出し,早期に治療介入することで動脈硬化進展を遅延させることが期待できる点である.3 FHの治療法と管理目標値現在の薬物療法の中心はスタチンである.FHの冠動脈疾患発症リスクはきわめて高いため,FHヘテロ接合体のLDL -C管理目標値は二次予防に相当する100mg/dL未満である.しかし,管理目標値を達成することが困難な場合も多く,治療前値の50%未満を目指すことも可とされている.FHホモ接合体に関しては,現時点で有効な薬剤治療は確立されておらず,LDLアフェレシスが唯一の治療方法である.4 新しい治療法の開発状況LDL受容体タンパク質を分解するproproteinconvertase subtilisin/like kexin type 9(PCSK9)の阻害薬として,抗PCSK9モノクローナル抗体やアンチセンスオリゴヌクレオチド(antisense oligonucleotide:ASO)の開発が進められているほか,動脈硬化促進性リポ蛋白であるVLDLとLDLの分泌を低下させるアポリポ蛋白B合成阻害薬(mipomersen),microsomal triglyceride transfer protein(MTP)阻害薬(lomitapide)等の開発が進められている.5 FHを見逃さないわが国におけるFHの診断率の低さを解決することは喫緊の課題である.『動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2012年版』において「家族性高コレステロール血症」が初めてひとつの独立した章として取り上げられた.診断基準や診療指針が一般医家に浸透することが期待されるが,家族歴の問診やアキレス腱肥厚,角膜輪等の診察が十分に実施されていない現状が予想される.高コレステロール血症患者の診察時に,自然とFHが頭に浮かぶような啓蒙を積極的に実行していかなければならないと考える.脂質異常症の診断と治療の動向― ACC/AHAガイドラインを考慮して