カレントテラピー 32-9 サンプル page 22/32
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カレントテラピー 32-9 サンプル
90 Current Therapy 2014 Vol.32 No.9922重減少」とされている3).Ⅲ 肥満症と脂質異常症肥満に起因する健康障害としての脂質異常症は,高中性脂肪(TG)血症,低HDL - コレステロール(HDL-C)血症,高LDL- コレステロール(LDL-C)血症のいずれもみられ,これらは減量によって改善する.脂質異常症の治療も,減量目的の食事療法が第一選択であるが,総摂取エネルギー量の制限だけでなく,食事内容(PFC比)が重要と考えられ,高LDL -C血症には低脂肪食が,高TG血症には低糖質食が有効と報告されている4).脂質異常症治療の目標は動脈硬化性疾患予防にあるが,多くの大規模臨床試験から最も重要な治療目標は高LDL-C血症の改善であることが明らかとなっている.HMG -CoA還元酵素阻害薬であるスタチンによるLDL -Cの低下が,動脈硬化性疾患の一次予防,二次予防において重要であることはすでに多くの研究で示されている.しかし,スタチン単独によるLDL -C降下だけでは取り除けない心血管リスク(residual risk)が存在し5),高TG血症や低HDL-C血症も含めた包括的な治療が重要と推察されている.海外の報告では,リパーゼ阻害薬(オルリスタット)はスタチンだけでなくエゼチミブやフィブラートとの併用において相補的・相乗的に効果を上げており,セチリスタットにおいても同様の効果が期待される.一方,糖尿病・メタボリックシンドロームの患者100人以上を対象に食事介入を12カ月以上行った治療成績では,2型糖尿病において内臓脂肪が減少した群で脂質異常症が改善したと報告されており6),減量による内臓脂肪減少が脂質異常症の改善において重要であることが示唆されている.Ⅳ 肥満症と薬物治療食事・運動療法を行っても体重減少・健康障害の改善がみられない場合に実施されるのが肥満症治療薬を用いた薬物療法である.日本肥満症治療学会の『肥満治療ガイドライン2006』の適応基準では①内臓脂肪型肥満であり,BMI≧25kg/m2で2型糖尿病や耐糖能障害,脂質異常,高血圧,高尿酸血症など健康障害が2つ以上ある場合,②BMI≧30kg/m2で睡眠時無呼吸症候群や整形外科的疾患が1つ以上ある場合を薬物治療の適応としている3).現在,新たな治療ガイドラインの作成が同学会で進行中である.セチリスタットの登場まで,本邦で使用可能な肥満治療薬は食欲抑制性の薬剤であるマジンドールのみであった7).その適応はBMI≧35kg/m2以上の高度肥満に限られ,かつ依存性や耐性発現への懸念かⅠ.肥満症の診断基準に必須な合併症1)耐糖能障害(2型糖尿病,耐糖能異常)2)脂質異常症3)高血圧4)高尿酸血症・痛風5)冠動脈疾患:心筋梗塞・狭心症6)脳梗塞:脳血栓症・一過性脳虚血発作7)脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患)8)月経異常,妊娠合併症(妊娠高血圧症候群,妊娠糖尿病,難産)9)睡眠時無呼吸症候群(SAS)・肥満低換気症候群10)整形外科的疾患:変形性関節症・変形性脊椎症11)肥満関連腎臓病Ⅱ.診断基準に含めないが,肥満に関連する疾患1)良性疾患:胆石症,静脈血栓症・肺塞栓症,気管支喘息,皮膚疾患(偽性黒色表皮腫,摩擦疹,汗疹)2)悪性疾患:胆道癌,大腸癌,乳癌,子宮内膜癌表肥満に起因ないし関連し,減量を要する健康障害