カレントテラピー 32-9 サンプル

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88 Current Therapy 2014 Vol.32 No.9920その作用が穏やかで安全性が確立された食品であれば,個別評価型の「健康補助食品」として,民間の自主的な運用管理に委ねるのもひとつの考え方である.また,一度許可になっていた食品でも,それを維持するには,莫大な資金と労力を必要とする.例えば,先に述べた上記の「トクヨウ」の食品群のなかに,2010年4月1日以降は「トクヨウ」としての効力を失っているものがある(旧特別用途食品など,http://fosdu.nih.go.jp/contents/other_index).先にも述べたが,新しい健康増進法により2009年3月末をもって,規格基準型についてはその許可業務は消費者庁に移管され,新たに認可を受ける必要がでてきた.その許可にあたっては,有効性,安全性について再度,医薬品の許可に近い治験が必要で,それには,新たな費用と労力をかける必要があり,一定の資金力が必要とされる.したがって,以上も民間の自主的な運用管理に委ねる理由のひとつで,2014年4月30日現在,65種類の健康補助食品に「JHFAマーク」を設定している(http://www.jhnfa.org/health-02.html).これらの食品も有効で,安価で安全であれば,脂質異常を伴う患者への投与が考慮されるかもしれない.Ⅷ 「適正製造規範」と「安全性自主点検認証制度」と「消費者庁の働き」もし,健康食品の利用を脂質異常症患者に考慮するなら,図1で示したマークを参考に選択するのが適切かと思われる.また,「適正製造規範(good manufacturingpractice:GMP)」という考え方もある.「適正製造規範」とは製造管理基準のことで,原材料の受け入れから最終製品の出荷に至るまで,適切な管理組織の構築および作業管理(品質管理,製造管理)の実施(GMPソフト)と,適切な構造設備の構築(GMPハード)により,製品の品質と安全性の確保を図ることで,その認定を受ける資格は,GMPに基づいた管理の実績が3カ月以上ある企業であれば申請が可能とされる.民間の自主的な運用管理および事業所側の努力の仕組みにより,脂質異常症患者の治療に役立つ食品の選択の幅が広がることが望まれる.また,健康食品の安全性自主点検認証制度(第三者認証)もある.これは事業者の実施する原材料や製品の安全性の自主点検が認証機関の定める認証基準に沿って適切に実施されたことを第三者の認証機関が確認するものである(図1).しかしながら,当然,絶対的安全性を保証するものではなく,また有用性を保証するものでもない.したがって,非常に大切な点は消費者の側に立った基準づくりで,サプリメント(機能性食品)が,病人に加えて健康な人々にも長期に投与される場合が多いことを考慮すると,今後,消費者庁の働きがさらに重要となる(http://www.caa.go.jp/foods/index.html).Ⅸ おわりに以上,脂質異常症予防における「トクホ」の位置づけを中心に,サプリメント(機能性食品)の可能性について述べた.超高齢社会が進行するなか,いよいよ,機能性の表示を容認する新たな制度の導入が動き出す.2兆円規模に達したとも言われる健康食品市場で,健康食品についてどこまでの機能性が担保され,消費者が正しい情報による自主的かつ合理的な商品選択を行えるのか,消費者教育も視野に入れて検討する必要があり,超高齢社会のわが国の医療のありかたをも考える必要がある.そのひとつとして,「国民が自らの健康を自ら守る」との考え方から,今こそ,機能性食品の理解も必要な時期に来ていると考える.参考文献1)井上郁夫:高齢化社会における糖尿病治療①.プラクティス26:355-358, 20092)井上郁夫:高齢化社会における糖尿病治療②.プラクティス26:477-481, 20093)井上郁夫:高齢化社会における糖尿病治療③.プラクティス26:594-598, 20094)井上郁夫:特定保健食品やサプリメントは有効か?.カレントテラピー 28:1055-1066, 20105)井上郁夫,片山茂裕:メタボリックシンドロームにおけるサプリメント(機能性食品),フォーミュラ食の有用性.日臨 メタボリックシンドローム(第2版,増刊号):530-537, 20116)吉川敏一,市川 寛:臨床の場におけるサプリメントの必要性.日臨内科医会誌 21:377-386, 2006